トルコが送還難民受け入れへ、EUは資金支援を倍増

EUは7日、ブリュッセルでトルコと首脳会議を開き、トルコが同国を経由してギリシャに流入したすべての移民や難民の送還を受け入れる代わりに、EUはトルコの難民対策を後押しするための資金支援を当初予定の2倍に当たる60億ユーロに拡大することなどで大筋合意した。17、18の両日に開くEU首脳会議で最終合意を目指す。

EUは当初、先月18日の首脳会議でトルコ側にシリア難民らの欧州流入を抑制する対策の強化を求める方針だったが、前日に首都アンカラで発生した爆弾テロを受けて会談を延期していた。EUのトゥスク大統領は会議後の記者会見で、「これで欧州への不法移民問題は終結する」と強調。トルコのダウトオール首相も「われわれの建設的な提案を実行することで、秩序ある人の移動を確保できる」と述べた。

シリアなどから欧州を目指す難民や移民はトルコ経由で地中海を渡り、ギリシャやイタリアに流入している。EU加盟国は難民の流入抑制に向けてトルコとの連携強化が鍵を握るとの認識を共有し、EUが資金面でトルコの難民対策を支援する見返りに、トルコに対して難民申請の条件を満たさない経済移民の受け入れや、密航業者の取り締まり強化などを求めていた。

トルコは当初、6月1日以降に送還される不法移民のみ受け入れる方針だったが、ダウトオール首相はトルコからギリシャに渡った密航者をすべて同国に送り返すことを容認し、ギリシャへの新たな渡航者は原則としてすべてトルコで引き受ける代わりに、送還者と同数のシリア難民をEUが受け入れ、域内に定住させる「難民交換」を提案。同時にEUからの資金支援を倍増させるほか、トルコ国民のEU域内へのビザ(査証)なし渡航の手続きを早め、6月末までに実現することなどを求めた。EU側は同首相の提案に大筋で合意。10日後のEU首脳会議までに詳細を詰める方針を確認した。

ただ、トルコ政府は政権に批判的な報道機関への圧力を強めており、イスタンブールの裁判所は7日までに、大手新聞「ザマン」と大手通信社「ジハン」を政府管理下に置く決定を下した。EUは報道の自由を尊重する立場から、こうしたトルコ政府の強権的な姿勢を批判しており、難民問題をめぐるトルコとの関係強化を懸念する声も出ている。

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