欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/2

総合 – 欧州経済ニュース

欧州委がエネルギー安全保障戦略を発表、ロシア依存脱却を加速

この記事の要約

欧州委員会は5月28日、エネルギー分野での脱ロシア依存に向けたエネルギー安全保障戦略を発表した。エネルギーの安定確保を図るため、調達先や調達ルートの多様化を進めるとともに、域内で電力やガスを融通し合うためエネルギー供給網 […]

欧州委員会は5月28日、エネルギー分野での脱ロシア依存に向けたエネルギー安全保障戦略を発表した。エネルギーの安定確保を図るため、調達先や調達ルートの多様化を進めるとともに、域内で電力やガスを融通し合うためエネルギー供給網の相互接続を加速させるほか、EUが一体となって供給国との交渉にあたることなどを盛り込んだ内容。6月末のEU首脳会議で欧州委の提案について検討する。

EUはエネルギー需要の50%以上を域外からの輸入に頼っており、特に天然ガスの39%、原油の33%をロシアに依存している。EU加盟国はウクライナ危機を受け、ウクライナ経由の欧州向けガス供給が停止されるなど最悪の事態に備え、欧州委に対して早急にロシア依存からの脱却に向けた具体策をまとめるよう求めていた。

戦略文書によると、短期的にはロシアからの天然ガス供給が停止された場合にどの程度の影響が出るかを調べる「ストレステスト」を冬までに実施するよう、加盟国に提案している。欧州委はストレステストの結果を基に、備蓄計画やインフラ整備計画を策定する方針だ。

一方、中長期的には資源の調達先や調達ルートの多様化を図るため、カスピ海沿岸と欧州を結ぶパイプラインの建設を急ぐと共に、液化天然ガスの輸入拡大に向けて新たな調達ルートを開拓する。また、域内でエネルギー網の相互接続を進め、供給停止などの緊急時に加盟国が備蓄を融通し合う体制を整える。さらにエネルギーの購入にあたって第3国との交渉を有利に進めるため、欧州委がEUを代表して交渉にあたることも提案に盛り込まれている。

欧州委のバローゾ委員長は声明で「ガス価格をめぐるロシアとウクライナの対立の影響で欧州向けガス供給が停止した2009年の危機以降、EUはさまざまな対策を進めてきた。しかし、最近のウクライナ情勢を機に、エネルギー需要の50%以上を域外に依存するEUとして、さらなる取り組みが不可欠であることがはっきりした。EUが一体となってエネルギー安全保障を強化する必要がある」と強調。エッティンガー委員(エネルギー担当)は「重要なエネルギー供給国とは常に強固で安定したパートナー関係を維持したいと考えているが、政治・経済的な脅迫にさらされる事態は回避しなければならない。そのためにはEUおよび加盟国が連携してエネルギー面で脆弱な国をサポートすると共に、エネルギー分野で単一市場の実現を急ぐ必要がある」と指摘している。