印タタ製鉄、欧州条鋼事業を英投資会社に売却

インド鉄鋼大手タタ・スチールは11日、欧州の条鋼事業を英投資会社グレイブル・キャピタルに売却することで合意したと発表した。鉄鋼製品の世界的な供給過剰と安価な中国製品の大量流入を背景に、タタは3月末、赤字経営が続く英国事業の売却を検討していると明らかにしていた。グレイブルは約4億ポンドを投じて英国内での生産活動を維持する方針を示しており、タタが同国から撤退しておよそ1万5,000人の雇用が失われるという最悪のシナリオはひとまず回避された。

発表によると、グレイブルはタタから名目上の1ポンドで欧州の条鋼事業を取得し、同事業の関連資産と負債を引き受ける。売却対象となるのはイングランド北部ヨークシャーのスカンソープ製鉄所、英国内とフランスにある3つの製鋼所、イングランド北部ヨークの設計コンサルタント事務所、イングランド北西部ワーキントンにあるエンジニアリング作業所などで、従業員は合わせて約4,800人(うちフランスが400人)に上る。グレイブルは人員削減は行わない方針を示す一方、賃金引き下げや企業年金の削減を柱とする合理化策を打ち出しており、1年以内の黒字化を目指すとしている。同社は8週間以内の手続き完了を見込んでおり、取得事業の名称は「ブリティッシュ・スチール」に変更される。

鉄鋼メーカーの業界団体UKスチールの代表はタタとグレイブルの合意を歓迎したうえで、「まだ危機を脱したわけではない」と警告。サウスウェールズにある英最大の製鉄所ポート・タルボット工場を含め、残るタタの英国事業についても「早急に長期的な投資を確保する必要がある」と強調した。一方、ジャビド英ビジネス・イノベーション・職業技能相は議会での答弁で、「(タタの英国事業について)現在、複数の買い手候補と接触し、政府としても支援の用意があることを伝えている」と述べた。

タタの英国事業をめぐっては、これまでに英鉄鋼商社リバティ・ハウス・グループを率いるサンジーブ・グプタ氏がポート・タルボット製鉄所の取得に名乗りを上げている。ただ、従業員4,000人を擁する同製鉄所は1日当たり100万ポンドの損失を出しているとされ、条件面で折り合わない可能性も指摘されている。

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