欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/7

総合 – 欧州経済ニュース

仏が財政健全化より成長に軸足、新財務相が赤字是正先送りを表明

この記事の要約

フランスで3日に発足した新内閣のミシェル・サパン財務相は同日、財政赤字是正期限の延長をEUの欧州委員会に要請することを明らかにした。新政府はEUに約束した財政均衡より景気回復を優先する方向に舵を切った格好。EUは主要国で […]

フランスで3日に発足した新内閣のミシェル・サパン財務相は同日、財政赤字是正期限の延長をEUの欧州委員会に要請することを明らかにした。新政府はEUに約束した財政均衡より景気回復を優先する方向に舵を切った格好。EUは主要国であるフランスの財政規律軽視を容認すると悪い先例となるだけに、激しい駆け引きが展開されそうだ。

EU加盟国は財政規律を定めた安定成長協定に基づき、毎年の財政赤字をGDP比3%以内に抑えることを義務付けられている。規律違反が続いているフランスは、2015年までに赤字を許容範囲内に抑えることを求められているが、財政均衡が難航しており、同国統計局が先月末に発表した13年の赤字はGDP比4.3%となり、目標としていた4.1%を上回った。

フランスは当初、13年までの赤字是正を求められていたが、2年先送りが認められた経緯がある。1日のユーロ圏財務相会合では、昨年の赤字削減目標を達成できなかったことでフランスへの風当たりが強まり、欧州委のレーン委員(経済通貨問題担当)が15年に規律違反を解消するよう釘を刺したばかりだった。

しかし、サパン新財務相は就任初日のラジオ局とのインタビューで、赤字是正を断念したわけではないとしながらも、15年という期限については「(EU)共通の利益を念頭に置き、話し合うべきだ」として、延期に向けた交渉を欧州委と行う意向を表明。予想される批判に対しても、「適切な(赤字是正の)タイミングを模索することが欧州にとっても有益。フランスにとって良いことは、欧州にとっても有益だ」と述べ、大国意識をむき出しにして正当性を主張した。

フランスでは3月30日に実施された統一地方選で与党が大敗。これを受けてオランド大統領は内閣改造に踏み切り、マニュエル・バルス内相を新首相に指名。3日に新内閣が発足した。

オランド政権は発足当初から財政健全化に消極的だった。新政府の財政キーマンが打ち出した赤字削減の先送りには、国民に痛みを強いる財政緊縮を緩めることで、支持率の低迷に歯止めをかけたいという思惑がある。政府は11月に陣容が刷新する欧州委員会の経済関連の要職に、サパン財務相の前任者であるモスコビシ氏を送り込み、欧州委との交渉を有利に進めようとするとの見方も出ている。

しかし、フランスの要求を受け入れると、同様の状況にあるイタリアなども追随し、財政規律が崩れかねない。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は3日、「合意したルールを守らなければ、信頼を守ることはできない」と述べ、フランスの動きを批判。欧州委のレーン委員も5日、「安定成長協定の規定では、再度の赤字是正期限の延長は、想定外の経済悪化という場合に限って認められるが、フランスはそうではない」と述べ、さらなる延長を認めない方針を示した。