欧州委が国境審査の6カ月延長を提案、ダブリン規則の見直し案も提示

欧州委員会は4日、中東などから欧州に押し寄せる難民流入の抑制策としてドイツやオーストリアなどが一時的に復活させている国境審査について、同措置を6カ月延長できるようにすることを加盟国に提案した。難民の受け入れ手続きについても見直し案を提示。特定の国に難民申請が集中した場合は加盟国で負担を分担するシステムを導入し、受け入れを拒否した国には金銭的な負担を要求する方針を打ち出した。

EU内では難民や移民の流入に歯止めをかけるための緊急措置として、昨秋以降、ドイツ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、さらに非加盟国のノルウェーが国境審査を復活させている。域内の自由移動を認める「シェンゲン協定」の第26条は、治安などに深刻な脅威がある「例外的な状況」に限り、協定に参加する26カ国が原則6カ月の期限付きで国境審査を再導入し、その後、最長2年まで同措置を継続することを認めている。ドイツなどでは今月12日に6カ月の期限が切れるため、欧州委に延長を認めるよう求めていた。国境審査の延長を認めるルールが適用されると、現行制度では初めてのケースとなる。

一方、難民の受け入れ手続きに関しては、難民らが最初に到着した国で難民審査を行うことを義務付けた「ダブリン規則」の見直し案が提示された。シリアなどからの難民や移民が殺到したギリシャやイタリアでは対応が追いつかず、多くの難民らが必要な審査を受けずに最終目的地のドイツや北欧などに向かう事態が生じており、1977年に発効したダブリン規則に基づく現行制度は事実上、機能不全に陥っている。

欧州委の提案によると、ダブリン規則の原則を維持したうえで、一度に大量の難民が到着するなどして当該国での対応が不可能になった場合、人口や経済規模に応じて加盟国で受け入れを分担する仕組みを導入する。受け入れを拒否する国に対しては、難民1人につき25万ユーロの負担を求めることも盛り込んだ。ただ、難民の分担受け入れに消極的なハンガリーなどは実質的な制裁に強く反発しており、実施に向けた協議は難航が予想される。

■トルコ国民のビザなし渡航、6月末までの免除を提案

一方、欧州委員会は4日、EU域内に渡航するトルコ国民に対するビザ(査証)を6月末までに免除するよう欧州議会と加盟国に提案した。EUは3月、新たにギリシャに密航した移民らをトルコに強制送還する見返りとして、EUがトルコの難民対策を後押しするため60億ユーロの資金支援を行うことや、トルコのEU加盟交渉を加速させることなどと並んで、トルコ国民のビザなし渡航を6月末までに実現することを約束していた。

ビザ免除は観光やビジネスを目的とした90日以内の短期滞在が対象。実現にはEUが求める72項目の基準をすべて満たす必要がある。欧州委のティメルマンス第1副委員長は「ビザ免除に向けてトルコ側の取り組みに著しい進展があった」と評価。そのうえで、72項目の条件のうち、人権保護など残る5項目の基準を早急に満たす必要があると指摘した。

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