欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/2

総合 – 欧州経済ニュース

欧州議会選ショック広がる、EU首脳会議が改革で合意

この記事の要約

欧州議会選挙で反EU勢力が躍進したことで、EUが危機感を募らせている。EU28カ国は5月27日に首脳会議を開き、EUが選挙結果を受けて、EUが大胆な改革を進める必要があるとの見解で一致。10月に新体制に移行する欧州委員会 […]

欧州議会選挙で反EU勢力が躍進したことで、EUが危機感を募らせている。EU28カ国は5月27日に首脳会議を開き、EUが選挙結果を受けて、EUが大胆な改革を進める必要があるとの見解で一致。10月に新体制に移行する欧州委員会が経済成長、雇用、競争力強化を最重要政策とするべきとの点でも合意し、次期欧州委員長の人選を同路線に沿って慎重に進める方針を打ち出した。

「EUはあまりにも大きく、尊大で、干渉しすぎる存在になった」――欧州議会選で反EUの独立党(UKIP)が1位となり、与党・保守党が3位に転落した英国のキャメロン首相は、首脳会議の前に記者団に、このように言い放った。EUの中央集権化が進み、加国の主権が狭まった結果、成長、雇用対策がおろそかになり、有権者にそっぽを向かれたという言い分だ。

伝統的にEU統合の深化に慎重な英国のこうした主張は、これまでEUで批判的な目を向けられてきた。しかし、今回の首脳会議では多くの国が同調し、統合推進派の旗頭であるフランスのオランド大統領も「欧州委員会は優先政策を絞り込み、不必要なことに手をつけるべきではない」と述べた。それほど、欧州議会選の結果は大きなショックだった。

議会選では、2大会派の中道右派・欧州人民党(EPP)と中道左派・欧州社会党が合わせて過半数の議席を維持したものの、大きく票を減らし、反EU、極右勢力が大躍進して議席の2割を確保。主要国では仏、英で政権与党が惨敗し、反EU勢力が1位となった。ユーロ圏の債務危機対策で手こずり、雇用悪化を招いたEUの既存体制に対する失望が大きな要因となった。

今後の対応を協議するため開かれた首脳会議では、EUが市民の信頼を取り戻すため、成長・雇用重視に転換する必要があるとの意見で一致し、これに沿った形で次期欧州委員長の人選を進めることを決めた。ファンロンパイ大統領(欧州理事会常任議長)が各国首脳、欧州議会の主要会派の意見を聞きながら今後の政策を調整し、欧州委員長の候補者とも面談する。その結果に基づいて、加盟国は6月下旬のEU首脳会議で候補者を決めることになる。

EUでは仏、伊など重債務国が、EUが求める厳しい財政緊縮策が成長を妨げ、雇用改善が進まないとして、財政規律の緩和を促している。今回の選挙を受けて、同問題が本格的に協議される可能性が出てきた。

欧州委員長はEU加盟国が首脳会議で指名し、欧州議会の承認を経て決まるが、今回からEUの新基本条約「リスボン条約」に定められた新ルールが適用され、加盟国は欧州議会選の結果を踏まえて人選を行う。このため、順当なら第1会派のEPPが擁立したユンケル氏(ルクセンブルク前首相)が次期欧州委員長となる。