欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/9/12

EU情報

17年のローミング料廃止に暗雲、欧州委が指針案を撤回

この記事の要約

欧州委員会は9日、EU域内の他の国で携帯電話を使用する際に徴収される国際ローミング(相互接続)料金の撤廃に向けて策定した、ローミングの「公正使用(フェアユース)に関する指針(案)」を見直す方針を明らかにした。欧州委が今月 […]

欧州委員会は9日、EU域内の他の国で携帯電話を使用する際に徴収される国際ローミング(相互接続)料金の撤廃に向けて策定した、ローミングの「公正使用(フェアユース)に関する指針(案)」を見直す方針を明らかにした。欧州委が今月5日に公表した指針案にはローミングの利用日数が年間90日を超えた場合、事業に課金を認めることなどが盛り込まれており、ローミングの完全撤廃からは程遠く、事業者寄りで消費者保護が不十分といった批判が集中。これを受けてユンケル委員長が指針案の取り下げを決定した。

EUでは2007年以降、域内の他の国で音声通話、ショートメッセージサービス(SMS)、データ通信を利用する際のローミング料金が段階的に引き下げられており、2017年6月15日までに原則として撤廃されることになっている。実現すれば、EU市民は域内のどこに移動しても、自国と同じ料金水準で通話やデータ通信などのサービスを利用できるようになるが、消費者が通話料金の安い国でSIMカードを購入し、別の国で恒常的に利用するといった悪質なケースを懸念する声が高まった。このため、事業者が一定の条件下で少額のローミング料金を徴収できるようにする例外措置が関連法に盛り込まれ、欧州委が具体的な課金の条件などを検討していた。

欧州委が公表した指針案によると、無償でローミングを利用できるのは年間90日までで、連続した利用では30日が上限。これらの上限を超えた場合、事業者は少額のローミング料金を課金することができる。ただし、国境を越えて通勤・通学する消費者に配慮して、日帰りの場合はローミングの利用日数としてカウントしない。

欧州委によると、事業者との協議では無償ローミングの上限を30日または14日とするよう求める声も出たという。欧州では旅行などで国外に滞在する日数は年平均12日となっており、欧州委は上限を年間90日(または連続30日)に設定することで、ほぼすべての利用者のニーズに対応できると説明していた。

欧州委の報道官はユンケル委員長の決定について、「指針案に対する各方面からの意見を聞き、委員長が見直しを決定した。委員長にとって単に最良の案ではなかったという話で、さらに詳細を詰めてより良い提案をまとめるよう指示を受けた」と説明している。