EU・米のTTIP交渉に暗雲、「事実上の決裂」発言も

EUと米国が年内の合意を目指す大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の交渉の先行きに暗雲が漂っている。交渉権限を持つ欧州委員会と米通商代表部(USTR)は引き続き年内の合意を目指す考えを強調しているが、英国のEU離脱決定や11月に迫った米大統領選、さらに来年実施されるフランスの大統領選やドイツの総選挙が交渉の推進力を奪っている。

EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指し、2013年7月にTTIP交渉を開始した。当初は14年末までの大筋合意を目指していたが、投資家保護の仕組み、食品や自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航。双方はオバマ大統領の任期が切れる来年1月までの妥結を目指しているが、EUが米国に求める公共調達市場の開放や、米国がEUの対応に不満を抱いているサービス分野の貿易自由化などをめぐり、協議は膠着状態が続いている。

ドイツのガブリエル経済相は8月28日、公共テレビZDFとのインタビューで、EU側が米国の一部要求を拒否したため、「米国との交渉は事実上、決裂した」と発言。基本的には自由貿易を支持するものの、いかなる犠牲を払ってでも協定を締結するわけではないと強調した。

一方、フランスのフェクル貿易担当相は30日、ラジオ番組に出演し、9月のEU首脳会議で交渉の「仕切り直し」を提案する考えを表明。オランド仏大統領も同日、米国との交渉は「行き詰っている」と述べ、年内の合意は「極めて厳しい」との認識を示した。

これに対して欧州委のシナス報道官は、「交渉には時間がかかるが、TTIPの締結に向けた話し合いは引き続き進展している」と言明。年内合意を目指す方針に変わりがないことを強調した。アーネスト米大統領報道官もガブリエル氏の発言を受け、「年内合意に向けて交渉を継続する。妥結にはいくつかの困難な決断が必要になるだろうが、大統領と側近は引き続き全力で取り組む」と述べた。

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