欧州委員会は19日、ルクセンブルクが仏公益事業大手エンジー(旧GDFスエズ)に不当な税優遇措置を適用した疑いがあるとして、調査を開始したことを明らかにした。同国にあるエンジーの子会社間の融資をめぐり、貸し手、借り手の双方が二重非課税となったことを問題視している。
問題となっているのは、エンジーのルクセンブルク子会社であるLNGルクセンブルク、LNGサプライ、エレクトラベル・インベスト・ルクセンブルク、GDFスエズ・トレジャリー・マネジメントが関わる融資。2008年から09年にかけて行われた。
LNGルクセンブルクはLNGサプライに融資したが、借入金は株式に転換可能なもので、利払いは発生しない形となる。借り手のLNGサプライは、これが名目上は融資であるため、利払いを所得控除の対象となる引当金として計上し、課税所得を引き下げることができる。一方、貸し手のLNGルクセンブルクは、同国では株式投資の利益は非課税となるため、融資を株式取引として処理し、融資で得た利益に課税されない。エレクトラベル・インベスト・ルクセンブルクによるGDFスエズ・トレジャリー・マネジメントへの融資も同様の手法で行われた。
これについて欧州委は、ルクセンブルクが同一の取引を「負債」と「株式」の両方として扱うことを他の企業には認めておらず、エンジーを不当に優遇した疑いがあると指摘。本格的な調査に踏み切った。ルクセンブルクは同社の扱いに問題はないとしながらも、調査に協力する姿勢を示している。
欧州委は一部の加盟国が企業誘致のため、特定の企業に税優遇措置を適用していることを多国籍企業による不当な課税逃れとして問題視し、摘発する動きを強めている。8月末にアイルランドが米アップルに適用していた税優遇措置を違法な公的支援にあたると認定し、アップルへの巨額の追徴課税を命じた。
ルクセンブルクでも米大手コーヒーチェーンのスターバックスと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズの金融子会社に対する優遇措置が違法と認定された経緯がある。