欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/10/4

EU情報

来年3月までにEU離脱を通告、英首相が明言

この記事の要約

英国のメイ首相は2日、与党・保守党の党大会で、EUに対して来年3月までに離脱を正式に通告する意向を表明した。首相が離脱通告の時期を具体的に明示したのは初めて。これによってEUとの離脱交渉は来春に始まり、2019年初めに離 […]

英国のメイ首相は2日、与党・保守党の党大会で、EUに対して来年3月までに離脱を正式に通告する意向を表明した。首相が離脱通告の時期を具体的に明示したのは初めて。これによってEUとの離脱交渉は来春に始まり、2019年初めに離脱が実現する見通しとなった。

離脱交渉はEU基本条約の規定に基づき、英政府が離脱を通告しないと開始できない。EUは早期の通告を求めているが、メイ首相は交渉の戦略を練るための準備期間が必要として、年内に行わない方針を堅持していた。

メイ首相は党大会初日に行った演説で、離脱通告を「不必要に遅らせるつもりはない」とした上で、「用意ができたら通告する。まもなく用意が整うだろう」と発言。「来年3月末までに通告する」と明言した。

EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)は9月中旬、メイ首相から来年1月または2月に離脱交渉開始の準備が整うとの説明を受けたことを明らかにしていたが、首相自身が通告時期を具体的に示したのは初めてだ。

EU側は英の離脱をめぐる不透明感がくすぶる状態が長期化するのを避けたいところで、離脱通告の直後に交渉を開始すると目される。交渉期間は原則的に2年と定められていることから、順調に協議が進めば英は19年春にも離脱することになる。

英政府は離脱交渉で、EU単一市場へのアクセスを確保しながら、EUからの移民流入を制限する権利を勝ち取ることを目指す。しかし、EU側は、離脱ドミノが広がるのを防ぐため、厳しい姿勢で交渉に臨む構えで、“いいところ取り”は許さないとしている。交渉では同問題が最大の焦点となる。

これについてメイ首相は演説で、「英企業に単一市場での自由な取引、営業に関する最大限の自由を与えたい」としながらも、移民制限の権利を失うわけにはいかないとして、あくまでも英国の主権を優先する意向を表明。単一市場へのアクセスを放棄する用意があることを示唆した。

メイ首相が移民制限にこだわる背景には、移民流入問題が国内の反EU感情を増幅させ、前政権が離脱の是非を問う国民投票の実施に踏み切る引き金となったことがある。

さらに首相は英国の主権を守るため、EU法が自動的に英国でも適用されることを定めた「欧州共同体(EC)法」を廃止する法案を来年に提出することも明らかにした。既存のEU法をいったん英国の法律に組み込んだ上で、不要な法令を廃止するという内容になるという。