EUは23日、スロバキアの首都ブラチスラバで非公式の貿易担当相会議を開き、米国と交渉中の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)について、オバマ米大統領の任期が切れる来年1月までに妥結させるのは「非現実的」との認識で一致した。EUと米国は年内の合意を目指していたが、交渉推進派だった英国のEU離脱が決定する一方、来年に大統領選挙や議会選挙を控えるフランスやドイツから交渉の見直しを求める声が上がり、交渉の推進力が失われていた。一方、2年前に交渉を終えたカナダとの包括的経済・貿易協定(CETA)に関しては、10月中に調印し、来年初旬の発効を目指すことで合意した。
EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指して2013年7月にTTIP交渉を開始したが、投資家保護の仕組み、食品や自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航している。ドイツのガブリエル経済相は8月末に公共テレビZDFとのインタビューで、「米国との交渉は事実上、決裂した」と発言。フランスのオランド大統領も米国との交渉は行き詰っており、年内合意は「極めて厳しい」との認識を示すなど、交渉の先行きに暗雲が漂っていた。
EU議長国スロバキアのジガ通商担当相は会議後の記者会見で、「オバマ大統領の任期終了までに最終合意に到達するのは現実ではない」と発言。欧州委員会のマルムストロム委員(通商担当)は、オバマ政権下で妥結できなかった場合、「少なくとも5~6カ月は交渉の中断を余儀なくされる」と指摘。新政権の通商政策が不透明なうえ、来年には英国のEU離脱交渉も開始されるため、米国との交渉をいつ再開できるか推測するのは「時期尚早だ」と警告した。
今回の会議ではフランスとオーストリアが交渉の一時停止を主張し、ルクセンブルクやスロベニアなども強い懸念を表明したが、EU加盟国の大半は交渉継続を求めている。欧州委と米通商代表部(USTR)による次回の交渉会合は10月上旬にニューヨークで開かれることになっており、これは予定通りに行われる見通しだ。
一方、カナダとのCETAに関しては、10月27日にブリュッセルで開くEU・カナダ首脳会議で正式調印する方針を確認した。10月18日に通商担当相による臨時会合を開いて調印を正式に承認する。