欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/16

EU産業・貿易

バイオ燃料規制で最終合意、穀物由来燃料の上限7%に

この記事の要約

EU加盟国は13日、ルクセンブルクでエネルギー相理事会を開催し、再生可能エネルギーの利用促進に向けて持続可能なバイオ燃料の生産を可能にするため規制案の内容で合意した。輸送部門における再生可能エネルギーの利用比率のうち、菜 […]

EU加盟国は13日、ルクセンブルクでエネルギー相理事会を開催し、再生可能エネルギーの利用促進に向けて持続可能なバイオ燃料の生産を可能にするため規制案の内容で合意した。輸送部門における再生可能エネルギーの利用比率のうち、菜種や大豆など穀物由来の従来型バイオ燃料の比率を最大7%に制限することを柱とする内容。食料生産を阻害することなく温室効果ガスを削減するため、食用作物に代わって藻類や農産廃棄物などを原料とする「第2世代」バイオ燃料の生産を促す狙いがある。今後、欧州議会で規則案について審議する。

EUが2009年に制定した「再生可能エネルギー指令」は、2020年までに運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率を10%以上とする数値目標を掲げ、加盟国に目標達成を義務づけている。さらに、同指令は目標達成のために使用することができるバイオ燃料の持続可能性基準を定めており、原料採取から製造、流通段階も含めたバイオ燃料の温室効果ガス削減率を最低35%とし、17年以降はこれを50%に引き上げることなどを明記している。一方、バイオ燃料の持続可能性をめぐる議論では、燃料用作物を生産するためもともとその土地で生産されていた作物を別の土地で生産しなければならず、森林や湿地などの破壊が進んで必ずしも温室効果ガスの削減につながらないことがその後の研究で明らかになってきた。

欧州委はこうした現状を踏まえて第2世代バイオ燃料への投資促進に向けた具体策の検討を進め、12年に輸送部門で使用される再生可能エネルギーのうち、穀物由来のバイオ燃料の比率を最大5%に制限する規則案を打ち出した。これに対し、欧州議会は昨年9月、穀物由来燃料の上限を6%とする修正案を採択。12月の閣僚理ではさらに上限を7%に引き上げる案が提示されたが、ルールの厳格化を求めるデンマークやベルギーなどの強い反対で合意に至らず、加盟国の間で意見調整が続いていた。

欧州委のエッティンガー委員(エネルギー担当)は「加盟国間で合意が成立したことは何もないよりはるかに良い。第2世代、第3世代バイオ燃料の研究・開発を全面的にサポートして従来型からのシフトを促す必要がある」とコメント。一方、7月からEU議長国を務めるイタリアのビチェンティ・エネルギー相は、欧州議会が穀物由来燃料の上限を6%とする案を支持している点に触れ、妥協点を探る交渉は難航するとの見方を示している。