欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/16

EUその他

GM作物の栽培認可で加盟国に禁止権限、環境相理で正式合意

この記事の要約

EU加盟国は12日、ルクセンブルクで開いた環境相理事会で遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールについて協議し、EUが栽培を認可した場合でも加盟国が独自の判断で禁止できるようにすることで合意した。GM作物に対するEU市民の […]

EU加盟国は12日、ルクセンブルクで開いた環境相理事会で遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールについて協議し、EUが栽培を認可した場合でも加盟国が独自の判断で禁止できるようにすることで合意した。GM作物に対するEU市民の根強い懸念に配慮して、加盟国に最終的な決定権を与えたうえで、安全性が確認された品種については速やかに域内での栽培を認可し、EUの規制に対する米国などの批判をかわすのが狙い。欧州議会の承認を経て新ルールを導入する。

GM作物の栽培認可をめぐる協議では、加盟国の立場の違いから特定多数決による採決では決着がつかず、安全性が確認された品種については最終的に欧州委員会が認可を勧告する形がとられている。現時点で域内での栽培が認められているGM作物は米モンサントが開発した害虫抵抗性のトウモロコシ「MON810」のみだが、実際に栽培されているのはスペインとポルトガルの2カ国にとどまっている。さらにフランスでは5月、EUが将来的に認可する品種を含め、国内でのGM作物の栽培を全面的に禁止する法案が成立。一方、一般裁判所は2年前、GM作物の栽培認可に関する議論が不当に長期化している状態はEU法に違反するとの判断を示しており、EUレベルで認可手続きの見直しが進められていた。

環境相理では棄権したルクセンブルクとベルギーを除く26カ国が、環境への影響や倫理面、社会経済的な根拠などに基づいて、加盟国が独自の判断で、自国でのGM作物の栽培を禁止することができる制度(オプトアウト)を導入することで合意した。

フランスのロワイヤル環境相は会議後、「新たな認可システムによって加盟国に選択の自由が保障される」とコメント。GM作物推進派の筆頭である英国のピーターソン環境相も「厳格な審査を通じて安全性が確認されたGM作物の栽培について、英国の農業従事者はより大きな決定権を持つことになる」と述べ、加盟国間で妥協が成立したことを歓迎している。