欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/7

EU産業・貿易

再生可能エネルギーの補助金規定は合法=欧州裁

この記事の要約

欧州司法裁判所(ECJ)は1日、EUの「再生可能エネルギー促進指令」に盛り込まれた補助金に関する規定はEU条約に抵触しないとの判断を示した。この問題をめぐっては、指令の補助金規定がEU条約に抵触しているとの法務官意見が1 […]

欧州司法裁判所(ECJ)は1日、EUの「再生可能エネルギー促進指令」に盛り込まれた補助金に関する規定はEU条約に抵触しないとの判断を示した。この問題をめぐっては、指令の補助金規定がEU条約に抵触しているとの法務官意見が1月に出されていたが、今回は法務官の見解が踏襲されない異例のケースとなった。

問題とされたのは、再生可能エネルギー発電投資支援策の中心となる公的支援に関連して、各国政府は発電施設が国外にある企業への補助金交付を拒否することができるとした規定。スウェーデン政府がEU指令に基づき、バルト海に位置するフィンランド自治領のオーランド諸島で風力発電を行っているオーランド・ヴィントクラフト社への補助金交付を拒否したところ、同社はスウェーデン政府が自国で生産されたエネルギーに不当な優位性を与えているとして訴訟を提起。スウェーデンの裁判所がEU指令とEU条約の整合性について欧州司法裁に判断を求めていた。

ECJのボット法務官は1月に出した意見書で、発電施設が他のEU諸国にある企業による補助金へのアクセスを禁止または制限する権限を各国政府に認めたEU指令の規定は、域内におけるモノの自由な移動を保障したEU条約に抵触すると指摘していた。

一方、欧州裁は、スウェーデン政府が補助金の対象を国内企業に限定することは、「環境を保護し気候変動と戦うために再生可能エネルギー源の利用を促進するという公共の利益に基づく目的によって正当化される」と指摘。この目的を達成する手段としてはエネルギーの消費段階よりも生産段階でグリーンエネルギーへの移行を促進する手段を追求するのが妥当であるとの認識を示したうえで、支援制度が長期的視点に立ったグリーンエネルギーへの投資を促進するとために必要であることから考えて、補助金の対象を国内企業に限定することは、EU条約のモノの移動の自由を保障した規定に矛盾しないとの判断を示した。