欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/7

EUその他

テレフォニカのEプルス買収、条件付きで承認=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は2日、スペイン通信最大手テレフォニカが独携帯電話サービス大手Eプルスを買収する計画を承認したと発表した。当初は競争上の懸念から買収を認めない方針だったが、テレフォニカが独国内に持つ通信インフラの一部の売却など […]

欧州委員会は2日、スペイン通信最大手テレフォニカが独携帯電話サービス大手Eプルスを買収する計画を承認したと発表した。当初は競争上の懸念から買収を認めない方針だったが、テレフォニカが独国内に持つ通信インフラの一部の売却など是正策を提案したことから、その実施を前提に認可した。これによってテレフォニカは独携帯電話サービス市場で1位に躍り出る。

テレフォニカは昨年7月、オランダ通信最大手KPN傘下のEプルスを総額85億5,000万ユーロで買収することで合意した。Eプルスは加入者数で独3位の携帯電話サービス会社。テレフォニカが傘下の同4位テレフォニカ・ドイチュラントとEプルスを統合して誕生する新会社は、ドイツテレコム傘下のTモバイル、英ボーダフォンを抜いて独最大の携帯電話サービス会社となる。

欧州委は昨年12月、買収計画を認めるとドイツで独自の通信ネットワークを保有する大手携帯電話サービス会社が4社から3社に減り、大手による寡占化が進んで健全な競争が阻害され、料金が上昇するほか、自前の回線を持たない仮想移動体通信事業者(MVNO)の事業拡大、新規参入が難しくなる恐れがあるとして、本格調査に着手。今年2月にテレフォニカに異議告知書を送付し、買収を認めない意向を表明していた。

これに対して、テレフォニカが提示した競争上の是正策は◇買収に先立って、新会社が保有するネットワーク容量(帯域幅ベース)の最大30%をMVNOに固定料金で譲渡する◇保有する無線周波数幅などを新規参入事業者に提供する◇Eプルスまたはテレフォニカ・ドイチュラントが独国内の既存のMVNOに対するホールセール(通信網の有償リース)を拡大する◇将来にドイツの第4世代(4G)サービスに参入する事業者に対して、4Gのホールセール・サービスを提供する――といった内容。欧州委は、これらが実施されると競争上の問題は解消されるとして、買収認可に踏み切った。

欧州の携帯電話サービス会社は、インフラ整備に巨額の投資が必要になっているほか、国際ローミング料金の引き下げなどEUの規制強化で収益が厳しくなる中、買収・合併によって規模を拡大し、厳しい競争を生き残ろうとする動きが活発化しているが、EUの競争重視政策が再編の大きなハードルとなってきた。EU最大の市場であるドイツを舞台とする今回の大型案件が条件付きながらも認められたことで、他社の追随が予想される。