欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/7

EUその他

ハンガリーが「サウスストリーム」敷設断行、エネルギー安定確保を最優先

この記事の要約

ハンガリーのオルバン首相は1日、ロシア産天然ガスを黒海経由で欧州諸国に運ぶパイプライン「サウスストリーム」を敷設するプロジェクトについて、自国内での工事を計画通りに進める考えを表明した。ロシアの国営ガス会社ガスプロムが主 […]

ハンガリーのオルバン首相は1日、ロシア産天然ガスを黒海経由で欧州諸国に運ぶパイプライン「サウスストリーム」を敷設するプロジェクトについて、自国内での工事を計画通りに進める考えを表明した。ロシアの国営ガス会社ガスプロムが主導する同プロジェクトをめぐっては、ウクライナ情勢を背景に、EUと米国が関係国に計画の中断や契約の見直しを迫っている。ブルガリア政府はこれを受けて先月、国内での建設計画を一時凍結する方針を発表しており、他の関係国の対応に注目が集まっていた。

オルバン首相はセルビアのブチッチ首相との会談後、記者団に対し「自国へのガス供給がウクライナ情勢によって左右されることがあってはならない。ハンガリーはエネルギーの安定確保に向けて、計画通りにサウスストリームの建設を進める」と明言。さらに、ウクライナを支援する方針自体に変わりはないとしたうえで、「政府はハンガリー国民に対して責任を負っている。サウスストリームの建設を断念しろというのであれば、それに代わるエネルギー供給ルートを用意してもらいたい」と語り、EUや米国に対する不満を表明した。

サウスストリームはロシア南西部からウクライナを迂回して黒海の海底を通り、中欧や南欧諸国に年間630億立方メートルの天然ガスを運ぶ全長およそ2,500キロメートルのパイプライン。ロシアと欧州側の関係国は2009年にパイプライン敷設の合意書に署名しており、2012年に着工し、15年から段階的に欧州向けガス供給が開始される予定となっている。

しかし、欧州議会は4月半ば、ロシアによるクリミア編入に抗議して、サウスストリーム計画の撤回を求める決議を採択した。欧州委員会はこうした動きを踏まえ、エネルギー市場の自由化を目的とする「第3次エネルギーパッケージ」の柱の1つで、電力・ガス生産を手掛ける大手企業による輸送網の保有・運営を厳しく制限したEUルールとの整合性を理由に、ブルガリア政府に対して計画の一時凍結を要請。同国のオレシャルスキ首相はこれを受け、先月8日にパイプライン建設に関するすべての作業を中断すると発表した。