欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/14

総合 – 欧州経済ニュース

イタリアが大型減税実施、EU財政規律は順守

この記事の要約

イタリア政府は8日に閣議承認した経済金融年報で、今年の国内総生産(GDP)予想成長率を1.1%から0.8%に下方修正した。これによって財政再建は厳しくなるが、レンツィ首相は約束していた大型減税の実施を明言。EUの財政規律 […]

イタリア政府は8日に閣議承認した経済金融年報で、今年の国内総生産(GDP)予想成長率を1.1%から0.8%に下方修正した。これによって財政再建は厳しくなるが、レンツィ首相は約束していた大型減税の実施を明言。EUの財政規律を守るため、財源を歳出削減などで賄いながら進める方針を打ち出した。

2月に発足した新政権を率いるレンツィ首相は、財政再建最優先から景気浮揚に軸足を移す姿勢を示している。その大きな柱として、3月に発表した経済改革計画で、低所得層を対象とする大型減税を実施する方針を打ち出していた。

減税策は、昨年7~9月期まで続いた戦後最長の景気後退によって痛んだ経済を個人消費拡大によって立て直す狙いがある。しかし、同じく悪化した財政の再建と両立させるのは難しく、どのように進めるかが注目されていた。

レンツィ首相は記者会見で、年収2万5,000ユーロ未満の層を対象に、67億ユーロ規模の減税を5月から実施すると発表。ただし、減税規模は予想成長率の下方修正を受けて、当初予定していた100億ユーロ超から縮小した。

減税で空く財政の穴は、借金に頼らず、歳出の45億ユーロ削減、付加価値税(VAT)引き上げと民間銀行への増税による22億ユーロの追加税収で埋める方針。銀行増税は、各行が保有するイタリア中央銀行の株式に対するキャピタルゲイン課税の税率を引き上げる形で実施する。

イタリアの昨年の財政赤字はGDP比2.8%で、前年から0.1ポイント縮小し、財政規律で上限となっている3%を下回った。新政権は今年の目標を当初の同2.5%から2.6%に緩めるが、規律を順守しながら景気回復を財政出動で主導する形となる。

EUの財政規律をめぐっては、厳しい財政緊縮が景気を圧迫しているフランスが、赤字削減期限の猶予を要求している。レンツィ首相も会見で、イタリアは規律を順守するものの、GDP比3%という赤字上限は「時代錯誤だ」として、見直しが必要との見解を表明。パドアン経済・財務相は、7月にEU議長国となる同国がルール改正を働きかけていく方針を示した。