欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/21

EU産業・貿易

資本不足の対応、結果公表から2週間内に=ECBの銀行検査

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は17日、ユーロ圏の銀行監督をECBに一元化する制度が始動する前に実施する銀行の資産査定とストレステスト(健全性審査)の結果公表と、資本不足が判明した銀行による対応の手順を発表した。結果公表は10月 […]

欧州中央銀行(ECB)は17日、ユーロ圏の銀行監督をECBに一元化する制度が始動する前に実施する銀行の資産査定とストレステスト(健全性審査)の結果公表と、資本不足が判明した銀行による対応の手順を発表した。結果公表は10月下期。銀行には事前に結果を伝えた上で、資本不足と判定された銀行には公表から2週間以内に増資計画を提示することを求める。

EUでは2010年から銀行のストレステストを実施しているが、これだけでは銀行の健全性を的確に判断することはできないとの指摘が多く、調査結果の信用性は低かった。このため、ユーロ圏の大手128銀行を対象とする今回の検査では、銀行監督一元化を機に、ストレステストと同時に銀行の資産の質も精査する資産査定を行い、銀行の健全性を総合的に判断することを決めた。

ストレステストでは、欧州委員会の最新経済予測に基づく「基本シナリオ」と、大きな逆風にさらされる場合を想定した「逆境シナリオ」の2つを設定。対象となる銀行の中核的自己資本比率が基本シナリオの下で8%、逆境シナリオ下で5.5%を上回ることが“合格”基準となる。資産査定では不良債権のほか、「レベル3資産」と呼ばれるデリバティブ商品、不動産など評価が難しい資産も詳細に査定する。

ECBによると、監督一元化制度が始動する11月4日に先立つ10月下期に、資産査定とストレステストを合わせた結果を公表する。両検査の結果を組み合わせる手法は8月上期に発表する予定。

一方、ECBは9月から10月にかけて個別に中間結果を通知し、最終結果を公表の直前に伝える。資本不足と判定した銀行に対応の時間的猶予を少しでも多く与えるため。この“直前”に関しては、ECBが非公式に銀行側に伝えたところでは48時間前という。資本不足の銀行は最終結果公表から2週間以内に具体的な増資計画をまとめ、ECBに提出して審査を受ける。

実際の増資は、「基本シナリオ」での資本不足については10月から6カ月以内、「逆境シナリオ」での不足は9カ月以内の実施を求められる。増資については、民間からの調達を最優先し、それで不十分な場合に公的資金注入を検討する。一方、資産査定で判明した資本不足に関しては、対象銀行が2014年内に発生した利益の留保によって穴埋めできるとする方針を打ち出した。

ドイツ銀行連盟(BDB)は同日発表した声明で、増資計画策定まで2週間という期限について、資産売却などを固めるのに時間がかかるとして、厳しすぎると不満を表明。最終結果の通知が公表の48時間前というのも、情報漏えいを防ぐ措置として理解はするが、不十分と指摘している。