欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/21

EU産業・貿易

EUと米、FTA第6回交渉が終了

この記事の要約

EUと米国は14~18日にブリュッセルで自由貿易協定(FTA)の第6回交渉を行い、欧米間で異なる規制やルールの調和などについて重点的に協議した。投資家と国家の紛争解決(ISDS)や食品の安全基準などをめぐり、欧州議会や市 […]

EUと米国は14~18日にブリュッセルで自由貿易協定(FTA)の第6回交渉を行い、欧米間で異なる規制やルールの調和などについて重点的に協議した。投資家と国家の紛争解決(ISDS)や食品の安全基準などをめぐり、欧州議会や市民団体などの間で協定に反対する意見が広がっている現状を踏まえ、双方は交渉の透明性確保に努める方針を確認した。

EUと米国は世界貿易の約3割を占める巨大貿易圏で高いレベルの市場開放を実現するため、昨年7月からこれまでに5回の交渉を実施している。EUのベルセロ主席交渉官は会見で、市場アクセスや規制の調和などについて集中的に協議を行い、自動車、化学製品、情報通信機器、医薬品・医療機器、化粧品などの分野で規制の互換性を促進することで合意したと説明。「今後の政治的決断に向けた準備作業として、極めて技術的な話し合いを行った」と述べた。また、米通商代表部(USTR)のマラニー首席交渉官は「今回は規制の問題に多くの時間を割いた。交渉を開始した1年前から多くのことが変化した」と交渉の成果を強調した。

交渉が行われたEU本部の周辺では、FTAに反対する急進派や環境団体など数十人が「協定案を公開しろ」といったプラカード掲げて抗議活動を展開した。反対派が最も問題視しているのは、投資家保護を目的としたISDS条項。ある国が法律や制度を変更したことで外国企業が損害を受けた場合、その企業が国を相手に中立的な国際機関に仲裁を申し入れ、賠償を請求できる仕組みで、海外で活動する企業にとってメリットがある一方、国家の規制権限が制限され、結果的に消費者が不利益を被るとの批判がある。

ISDSをめぐっては、オーストラリア政府がたばこ製品のパッケージデザインをブランド間で統一する規制を導入したところ、米フィリップ・モリス社の香港子会社から同国と香港の投資協定に基づいて仲裁を提起された事例などがある。ベルセロ主席交渉官はISDS条項に関する意見募集に対し、約15万件の回答が寄せられたことを明らかにしたうえで、「環境や健康、安全を損なうような決定がなされることは断じてない」と明言。反対派の懸念を払しょくするため、米国との交渉でより一段の透明性確保を図る考えを示した。