欧州証券市場監督機構(ESMA)は8日、英国とEUの離脱条件に関する協議がまとまらないまま来年3月の離脱期限を迎えた場合に備え、デリバティブ(金融派生商品)市場が混乱する事態を避けるためのルール変更を提案した。取引の継続性確保に向けて早急に対策を講じる必要があるため意見募集は行わず、欧州委員会、閣僚理事会、欧州議会でESMAの提案について検討する。
企業が相場変動のリスク回避などに利用しているデリバティブ取引では、欧州における中央清算機関としてロンドン証券取引所グループのLCHクリアネットが圧倒的なシェアを握っている。最悪のシナリオである「合意なき離脱」になった場合、現行ルールではEU内に拠点を置く金融機関はLCHクリアネットを利用できなくなるため、デリバティブ取引の決済処理が行われず市場に深刻な影響が及ぶことになる。
ESMAの提案は、合意なき離脱になった場合、店頭(OTC)デリバティブ取引に関して清算機関の利用を義務付ける(いわゆる清算集中)「欧州市場インフラ規則(EMIR)」を修正し、未決済のデリバティブ契約をロンドンの清算機関からEU内の清算機関に移動するための移行期間として、金融機関に離脱日から12カ月の猶予を与えるという内容。最終顧客の承認を得たうえで、OTCデリバティブポジションをEU域内に移すための手続きに着手できるとしている。
英中銀のイングランド銀行は先月、英国とEUが離脱条件で合意できなかった場合、離脱後に満期を迎える最大41兆ポンド(約6,000兆円)のデリバティブが不安定な状態に置かれると警告。英側では離脱後も引き続きサービスを継続して利用できるよう法整備を進めているのに対し、EU側では進捗がみられないとして迅速な対応を求めていた。