欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/14

EUその他

欧州委が再可エネ導入支援の新指針発表、オークション導入など柱に

この記事の要約

欧州委員会は9日、再生可能エネルギーの利用促進を目的とする公的支援に関する新たな指針を発表した。EUでは2020年までに再生可能エネルギーの利用比率を20%まで引き上げるという目標を掲げ、各国政府は風力、太陽光、バイオマ […]

欧州委員会は9日、再生可能エネルギーの利用促進を目的とする公的支援に関する新たな指針を発表した。EUでは2020年までに再生可能エネルギーの利用比率を20%まで引き上げるという目標を掲げ、各国政府は風力、太陽光、バイオマス発電などの技術開発と普及を手厚く支援してきた。しかし、一部の技術はすでに成熟の段階に入っており、逆に補助金などの支援策によって市場に深刻な歪みが生じ、電気料金の高騰を引き起こしている。欧州委はこうした現状を踏まえ、再生可能エネルギーに対する公的支援のあり方について抜本的な見直しを進めていた。

欧州委は域内の企業や消費者に過度の負担を強いることなくEUの目標を達成するため、段階的に市場メカニズムを導入して再生可能エネルギーのコスト競争力を高める支援スキームを確立する必要があると指摘。市場価格に関係なく常に固定価格で買い取る「フィード・イン・タリフ(FIT)」から、電力卸市場価格にプレミアムを付けて買い取る「フィード・イン・プレミアム(FIP)」に移行するとともに、オークションを実施して最低価格の入札者が落札するシステムの導入を打ち出した。第1段階として15~16年に再生可能エネルギーによる発電容量の一部について試験的にオークションを実施し、17年からすべての加盟国に同制度の導入を義務づける。

一方、再生可能エネルギーの導入促進策に伴うコスト負担が企業に重くのしかかっている現状に対処するため、とりわけ厳しい国際競争に直面しているエネルギー集約型産業を対象に、電気料金に上乗せされる負担金を減免できる制度が導入される。化学、金属、製紙、窯業などが対象となるが、加盟国はそれぞれ実情に合わせて他のセクターに範囲を拡大することができる。

指針にはこのほか、域内の国境を越えたエネルギーの相互融通を円滑にするためのインフラ事業に対する公的支援の条件などが盛り込まれている。新指針は今年7月1日から20年末まで適用される。

一方、ドイツ政府は8日、エネルギー集約型産業の競争力維持を目的とした、再生可能エネルギーを下支えするための追加的なコスト負担を免除する制度を見直し、対象企業を削減する法案を閣議で承認した。欧州委は同制度が自国企業を優遇するための実質的な補助金にあたり、EU競争法に違反する可能性があるとして昨年7月から調査を進めている。新たな法案はこうした欧州委の懸念に対応するためのもので、ガブリエル経済・エネルギー相は欧州委との協議を経て法案をまとめたと説明している。制度改正には議会の承認が必要だが、新ルールが導入されると例外措置の適用範囲が「厳しい国際競争にさらされ、極めて高いエネルギーコストの負担を強いられている」企業に限定され、対象企業は現在の約2,000社から1,600社程度に削減される見通しだ。