欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/14

EUその他

欧州委が上場企業のガバナンス強化を提案、役員報酬めぐる株主権限強化

この記事の要約

欧州委員会は9日、上場企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)向上を支援するための施策案を発表した。報酬制度に関して株主の発言権を強化することが柱で、経営の透明性を高めて企業の競争力を強化し、長期にわたる持続的な成長を […]

欧州委員会は9日、上場企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)向上を支援するための施策案を発表した。報酬制度に関して株主の発言権を強化することが柱で、経営の透明性を高めて企業の競争力を強化し、長期にわたる持続的な成長を促すのが狙い。今後、閣僚理事会と欧州議会で欧州委の提案について協議する。

欧州委の提案によると、域内に約1万社ある上場企業は報酬制度に関する情報開示を義務付けられ、役員の給与や賞与水準を決定する際、株主の承認を得なければならない。また、役員報酬と社員の平均的な報酬の格差についても株主に根拠を示す必要がある。

欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は「長期的な視野に欠けたショート・ターミズム(短期主義)がいかに域内の企業と欧州経済の発展を妨げてきたか、ここ数年で明らかになった。今回の提案はこうした問題に対処するため、報酬制度に関する発言権を含めて株主が適切に権限を行使し、出資する企業の経営に積極的に関与するよう促すものだ」と説明している。

欧州委はこのほか、機関投資家などの株主から手数料を受け取って、株主総会の議案に賛成すべきか反対すべきか助言する議決権行使助言会社(プロクシアドバイザー)を新たに規制の対象とし、助言内容や株主と企業の間で利益相反が生じた場合の対応などについて説明責任を求めることを提案している。さらに企業と関連当事者との取引についても透明性を確保するため、総資産の1%を超える取引は詳細情報を開示し、5%を超える取引は株主の承認を得ることを義務づけるルールの導入を提案している。

給与コンサルティングのMM&Kとコーポレート・ガバナンスに関連した調査サービスを専門に手掛けるマニフェスト・インフォメーション・サービシズの調査によると、FTSE100指数の構成銘柄100社では経営トップと平均的な従業員の報酬格差が2013年は平均120倍に上った。15年前(1998年)の平均47倍と比べると格差は約2.5倍拡大したが、サブプライムローン問題が表面化した07年の151倍と比べると縮小している。