欧州司法裁判所は8日、通信事業者に通信データの保存を義務付けるEUのデータ保持指令が基本的人権を侵害しているとして、同指令を無効とする判決を下した。これにより、EUはデータ保存に関するルールの見直しを迫られることになった。
データ保持指令はテロや組織犯罪対策の一環として2006年3月に導入された。全加盟国の通信事業者に通話、電子メール、テキストメッセージなどの通信記録を6~24カ月間保存することを義務付け、必要に応じて捜査当局にデータを公開することが求められるが、ドイツなど一部加盟国ではプライバシー保護の観点から同指令を施行していない。
欧州司法裁は、データ保持指令が「個人生活と個人情報に関する基本権を著しく深刻な方法で侵害している」と指摘。加入者あるいは登録ユーザーに知らせることなくデータを保存し利用することは、当該人物に個人生活が常に監視されているという感覚を抱かせる可能性があるとした。
欧州委員会のセシリア・マルムストロム内務担当委員は判決を受けて、「欧州委は判決内容とその影響について慎重に評価を行う。eプライバシー指令の改正およびデータ保護の枠組みに関する協議の進展を踏まえ、作業を進めていく」とのコメントを発表した。