EU加盟国は8日にブリュッセルで大使級会合を開き、EU著作権指令の改革案で合意した。規制強化に反対する大手IT企業が活発なロビー活動を展開する中、加盟国間の意見調整が難航していたが、フランスとドイツが提案した妥協案を20カ国が支持し、ようやく合意にこぎつけた。加盟国、欧州議会、欧州委員会は12日~13日に開く三者協議で最終的な合意を目指す。
欧州委が2016年7月に発表した「デジタル単一市場(DSM)における著作権指令(案)」で最大の焦点となっているのは、グーグル傘下の「ユーチューブ」をはじめとするインターネットプラットフォームを運営する事業者(プラットフォーマー)に対し、「コンテンツフィルター」を導入してユーザーが投稿する動画などが著作権を侵害していないかどうかを事前にチェックし、適切に対処することを義務付ける第13条の規定。違法コンテンツが投稿された場合、現行ルールでは権利者が著作権侵害の申し立てを行い、これを受けてプラットフォーム側が当該コンテンツを削除する仕組みになっているが、新ルールが導入されるとプラットフォーマーは違法コンテンツを能動的に排除しなければならず、対応が不十分な場合は不法行為責任を問われる可能性がある。
第13条をめぐっては、反対派の間で「インターネットの自由が脅かされる」といった批判が根強く、欧州議会では規制の対象を「オンライン上のコンテンツ共有サービス事業者」と明記し、小規模プラットフォーマーを対象から除外する修正を加えてようやく可決にこぎつけた。しかし、先月開かれた大使級会合では13条の適用を除外する事業者の範囲をめぐって加盟国の意見調整がつかず、小規模プラットフォーマーやスタートアップ企業に対する適用除外を求めるドイツやオランダなど11カ国が改革案に反対を表明。これを受けて3者協議の開催も見送られた経緯がある。
事態の打開に向け、フランスとドイツは今回、適用除外の対象となる事業者の範囲について妥協案を提示した。それによると、13条の適用が除外されるのは◇設立から3年未満◇年間売上高が1,000万ユーロ未満◇月間ユーザー数が500万人未満――という3つの条件にあてはまるプラットフォーマーのみ。それ以外の事業者はコンテンツフィルターを導入して違法コンテンツの再投稿を防止しなければならない。
欧州委のアンシプ委員(デジタル単一市場担当)はツイッターへの投稿で「デジタル時代に対応した著作権改革をめぐり、加盟国が再び共通の立場を見いだしたことを歓迎する。12日からの三者協議で最終合意できると期待している」と述べた。