米が自動車関税を取引材料にEUに圧力、欧州委は報復関税の構え

米国のトランプ大統領は20日、EUとの通商協議で合意できない場合、EUから輸入する自動車に追加関税を課す方針を表明した。自動車関税を取引材料に、農産品の市場開放などを求めてEU側に圧力をかける狙いがある。一方、欧米メディアは22日、トランプ米政権が自動車や自動車部品への追加関税を発動した場合に備え、EU側が建設機械大手キャタピラーなどの米国製品に報復関税を課す方針を固めたと報じた。EU内では米国が追加関税に踏み切るとの見方が広がっており、警戒を強めている。

トランプ氏は訪米したオーストリアのクルツ首相との会談後、報道陣に対し「公正な貿易取引が成立するかにかかっている。米国はEUと合意しようとしているが、極めて困難だ。合意できなければ(EUからの輸入自動車に)関税を課す」と述べた。米商務省は17日、自動車の輸入制限に関する報告書をトランプ氏に提出しており、同氏はこれを踏まえて5月中旬までに自動車と自動車部品に対する追加関税の是非などを判断する。

一方、ブルームバーグ通信は22日、EU当局者の話として、トランプ政権がEUから輸入する自動車や自動車部品に追加関税を課した場合、200億ユーロ相当の米国製品に報復関税を課す準備に入ったと報じた。対象となる物品にはキャタピラーの他に事務機器大手ゼロックス、旅行かばん大手サムソナイト・インターナショナルなどの製品が含まれているという。

欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は同日、ルーマニアで開いた通商担当相による会合後の会見で、「自動車や自動車部品への輸入関税は望んでいないが、発動された場合に備えて報復措置のリスト作りを進めている」と述べた。

欧州委のユンケル委員長とトランプ米大統領は昨年7月の首脳会議で、自動車を除く工業製品の関税撤廃に向けて交渉を開始し、その間は米国がEUからの輸入自動車に対する追加関税の発動を見合わせることで合意した。農産品についてはEU内で反対意見が根強いため、当面は交渉の対象から除外する代わりに、EU側が米国産大豆の輸入拡大に応じることで合意。双方は高官級の作業部会を立ち上げて交渉入りの準備を進めているが、米国内では農業分野も含めた包括的な協議を求める声が高まっており、協議は難航している。

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