欧州委員会は6月28日、EUがブラジルやアルゼンチンなど南米4カ国が加盟する関税同盟、南米南部共同市場(メルコスル)との自由貿易協定(FTA)締結で政治合意したと発表した。保護主義的な通商政策が広がりをみせる中、発効すれば人口およそ7億8,000万人を擁し、国内総生産(GDP)約19兆ユーロ(約2,300兆円)に上る巨大自由貿易圏が誕生する。
EUとメルコスル(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ)はブリュッセルで開いた外相級会議でFTAに政治合意した。欧州委のユンケル委員長は「貿易の緊張が高まる中、われわれはルールに沿った貿易を支持するとの強いシグナルを送った」とコメント。マルムストローム委員(通商担当)も「互恵的で開かれた、ルールに基づく貿易を支持するという明確なメッセージだ」と強調した。一方、ブラジルのボルソナロ大統領はツイッターで「これまでで最も重要な貿易協定の1つになる。われわれの経済に大きな利益をもたらす」とコメントした。
欧州委によると、EUからメルコスルへのモノの輸出は年間約450億ユーロ、メルコスルからEUへの輸出は約430億ユーロに上る。FTAが発効すると、EUからメルコスルに輸出する品目の91%、メルコスルからEUに輸出する品目の92%で関税が撤廃される。
メルコスル側は現在、EUから輸出する自動車に最大35%、自動車部品に14~18%の関税をかけているほか、機械類には14~20%、化学製品にも18%以上の関税を課している。欧州委はFTAが発効すると関税の撤廃や低減によりこうした品目を中心に輸出が拡大し、EU側の企業は年間40億ユーロ以上の恩恵を受けると試算している。
EUとメルコスルは2000年にFTA交渉を開始したが、ブラジルとアルゼンチンで保護主義を掲げる政権が誕生したことなどにより、交渉を中断していた。15年以降に両国で政権交代を経て自由開放路線に転換したことを受け、17年から交渉を再開していた。