欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/8/18

総合 – 欧州経済ニュース

ユーロ圏経済が失速、4~6月期はゼロ成長に

この記事の要約

EU統計局ユーロスタットが14日発表したユーロ圏の2014年4~6月期の域内総生産(GDP、速報値)は前期から横ばいとなり、ゼロ成長にとどまった。ユーロ圏は13年4~6月期から4四半期連続でプラス成長となっていたが、ドイ […]

EU統計局ユーロスタットが14日発表したユーロ圏の2014年4~6月期の域内総生産(GDP、速報値)は前期から横ばいとなり、ゼロ成長にとどまった。ユーロ圏は13年4~6月期から4四半期連続でプラス成長となっていたが、ドイツとイタリアがマイナス成長、フランスがゼロ成長となり、前期の0.2%成長から失速した。(表参照)

EU28カ国ベースのGDPは0.2%増となったが、上げ幅は前期の0.3%から縮小した。前年同期比のGDPはユーロ圏が0.7%増、EUが1.2%増で、上げ幅はそれぞれ前期の0.9%、1.4%を下回った。

ドイツのGDPは前期比0.2%減となり、前期の0.7%増から悪化。12年10~12月期以来のマイナス成長となった。同国の統計局は、設備投資と輸出が不調だったことに加えて、1~3月期に暖冬の影響で建設工事が活発化し、GDPを押し上げた反動が出たと説明している。

フランスは2期連続のゼロ成長。イタリアのGDPは0.2%減と、0.1%減だった前期に続くマイナス成長となり、再び景気後退局面に突入した。

一方、債務危機でEUなどから金融支援を受けた国では、スペインが0.6%の成長を記録し、伸び率は前期の0.4%から拡大。ポルトガルのGDPは0.6%増となり、プラス成長に転じた。ギリシャはマイナス成長が続いているものの、下げ幅は前年同期比0.1%と、08年10~12月期以来の低水準まで縮小した。

このほか、オランダがプラス成長に転じ、英国のGDP伸び率が前期と同水準の0.8%と堅調だったほか、中東欧諸国がルーマニアを除いてプラス成長となった。しかし、ユーロ圏は独、仏、伊の主要3カ国の不調が響き、ゼロ成長に後退した。

ユーロ圏ではギリシャを震源地とする債務危機が沈静化し、13年4~6月期に景気後退を脱し、7四半期ぶりのプラス成長に転換。その後は回復基調にあった。しかし、成長のペースは緩やかで、失業率は高水準にあり、景気回復は本格軌道に乗っていなかった。4~6月にゼロ成長となったことで、ついに回復がとん挫した格好だ。

さらに、今後はウクライナ危機をめぐるEUの対ロシア制裁と、ロシアの対抗制裁発動の影響が及ぶのは避けられず、下期の復調を危ぶむ声が急速に高まっている。インフレ率も前年同期比0.4%と低水準にあり、デフレ懸念がくすぶっている(後続記事参照)。こうした状況を受けて、欧州中央銀行(ECB)に量的金融緩和を求める圧力が強まるのは必至。14日にはドイツの10年物国債の流通利回りが、ECBによる国債買い取り開始を見込んで低下し、初めて1%を割り込んだ。ただ、市場ではECBが6月に決めた金融緩和の効果を見極めるため、量的緩和を来年まで先送りするとの見方が多い。

一方、EUでは成長の失速を受けて、フランス、イタリアなどが債務圧縮より成長を優先する姿勢を一段と強める可能性が高い。フランス政府は14日、景気停滞に伴い、今年の財政赤字がEUに約束したGDP比3.8%まで縮小するのは困難で、4%を超えるとの見通しを表明。赤字をGDP比3%以内に抑えることを義務付けるEUの財政規律に違反する状態を15年に解消するという公約の順守が厳しい情勢となっている。しかし、ドイツなど財政規律重視派の国や欧州委員会、ECBは構造改革推進を主張しており、経済政策をめぐって加盟国が対立する局面も予想される。