欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/8/18

西欧

ポルトガルが大手銀BESを救済、49億ユーロの公的資金注入

この記事の要約

ポルトガル政府が経営危機に直面する大手銀行バンコ・エスピリト・サント(BES)の救済を決めた。金融不安の拡大を食い止めるのが目的で、優良資産を切り離して新銀行ノボバンコを設立し、同行に銀行救済基金を通じて49億ユーロの公 […]

ポルトガル政府が経営危機に直面する大手銀行バンコ・エスピリト・サント(BES)の救済を決めた。金融不安の拡大を食い止めるのが目的で、優良資産を切り離して新銀行ノボバンコを設立し、同行に銀行救済基金を通じて49億ユーロの公的資金を注入して存続を支える。不良資産は「バッドバンク」に移管して処理する。

BESの救済は、ポルトガル中央銀行が3日に発表した。49億ユーロを注入する銀行救済基金は、ポルトガルが債務・金融危機に陥った2012年に、EUと国際通貨基金(IMF)の指示で創設されたもの。国内銀行が分担して拠出し、中銀が管理している。BES救済で同基金に空いた穴のうち44億ユーロは、ポルトガル政府が融資して埋める。中銀はBES救済について、49億ユーロの注入は緊急融資の形で実施され、利子を含めて返済されるため、納税者の負担はないと強調している。

BESはポルトガルの金融危機に際して、公的支援に頼らず乗り切った唯一の大手銀行で、上場している民間銀行の中では最大手。しかし、同行が属するポルトガルの企業グループ「グルポ・エスピリト・サント」の親会社であるエスピリト・サント・インターナショナル(ESI)が、赤字隠しの疑いが浮上したのをきっかけに資金繰りに行き詰まり、7月に債務返済不能となったことから、経営不安がBESや同行の筆頭株主である系列企業エスピリト・サント・フィナンシャルグループ(ESFG)などグループ会社に飛び火していた。

政府が救済に踏み切ったのは、BESが7月末に発表した2014年6月中間決算で、事実上経営破たんしたグループ企業の債権への引当金が膨らんで35億8,000万ユーロの赤字となり、しかも同債権額が当初発表していた規模を上回ったことから、株価の下落が一気に加速するなど経営不安が一段と強まったため。中銀は当初、民間からの出資で同行の資本を増強し、危機を乗り切る方針を打ち出していたが、この状況では不可能と判断し、公的救済に踏み切った。EUの欧州委員会も3日、救済措置を金融市場の安定を保つために必要で、EUの公的支援に関するルールに合致するとして承認した。

BESの預金と優先債務は、4日に発足した新銀行ノボバンコに移管され、預金者と対象債権者は保護される。一方、バッドバンクは不良資産の処理を進めた上で清算され、株主と劣後債保有者が損失を負担する。また、中銀はノボバンコを将来的に民間に売却する方針で、売却益を融資返済に充てる。

ギリシャに端を発したユーロ圏の金融・債務危機では、税金を投入して銀行を救済していたが、新たに発足する銀行の破綻処理を一元化する制度では銀行の拠出で創設される「単一破綻処理基金」を活用し、債権者にも負担を強いることになっている。今回のポルトガルのケースは、同制度のテストケースとして注目されている。