欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/8/25

EU産業・貿易

証券化市場の活性化に向け規制見直しへ、欧州委が行程表を策定

この記事の要約

欧州委員会は長期的な資金調達を可能にしてEU経済の成長を促すため、金融・経済危機の影響で縮小した証券化市場を活性化するための具体策を検討している。ロイター通信によると、欧州委は証券化市場の拡大を阻害している要因を取り除く […]

欧州委員会は長期的な資金調達を可能にしてEU経済の成長を促すため、金融・経済危機の影響で縮小した証券化市場を活性化するための具体策を検討している。ロイター通信によると、欧州委は証券化市場の拡大を阻害している要因を取り除くため、規制の変更が必要かどうかを来年中に判断する方針で、質の高い証券化商品の扱いなどがカギになるとみられる。

EU市場では銀行融資が調達資金全体のおよそ3分の2を占め、この割合は米国の約2倍に上る。しかし、金融危機の影響で現在も銀行による貸し渋りが続いており、とりわけ中小企業にとって債権の証券化が有望な資金調達手段となる。欧州中央銀行(ECB)は低インフレの長期化懸念に対応するため、資産購入による量的緩和策を検討しているが、サブプライムローンなどが金融危機の直接の原因となったことで、資産担保証券(ABS)をはじめとする欧州の証券化市場は縮小傾向が続いている。このためECBや英中銀イングランド銀行は、証券化商品を売買する銀行や保険会社に対する資本要件の緩和が市場を活性化するうえで不可欠との見方を示している。

ロイターによると、欧州委は9月にイタリアのミラノで開催されるEU財務相理事会に向けて策定した「証券化のためのロードマップ」と題する政策文書で、欧州および世界規模で進められている証券化市場の拡大に向けた11の取り組みをリストアップ。欧州委、ECB、域内の証券・銀行・保険監督機関が連携して一連の取り組みの進捗状況をチェックし、2015年末までに規制の見直しなど必要な措置をまとめることを提案している。

証券化商品の質とリスク設定の問題に関しては、国際的な銀行資本規制「バーゼルⅢ」ではABSなどの質の違いに関係なく、一律に規制が適用される点に触れ、これが証券化市場の拡大を阻害する要因になっていると分析。質の高い証券化商品に対する規制を緩めることで市場の流動性を高めることができるとし、「高品質」と認定するための適切な基準づくりが重要な鍵になると指摘している。