欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/1

総合 – 欧州経済ニュース

次期EU大統領にポーランド首相、外相には伊モゲリーニ氏=首脳会議で決定

この記事の要約

EU加盟国は8月30日に開いた臨時首脳会議で、次期のEU大統領(欧州理事会常任議長)、EU外相(EU外交安全保障上級代表)の人選で合意した。EU首脳会議の議長として加盟国間の調整にあたるEU大統領に、ポーランドのトゥスク […]

EU加盟国は8月30日に開いた臨時首脳会議で、次期のEU大統領(欧州理事会常任議長)、EU外相(EU外交安全保障上級代表)の人選で合意した。EU首脳会議の議長として加盟国間の調整にあたるEU大統領に、ポーランドのトゥスク首相(57)を指名。EU外相の後任にはイタリアのモゲリーニ外相(41)を選出した。これによって欧州委員会の委員長を含めたEUの3大ポストの人選が完了した。

トゥスク氏はファンロンパイEU大統領(ベルギー出身)の後任として、12月1日付で同職に就任する。任期は2年半で、1回の再選が可能。モゲリーニ氏は11月1日付で、英アシュトン氏の後任のEU外相となる。任期は5年。EU外相は2代続けて女性が担うことになる。

加盟国は7月の首脳会議で両ポストの人選について協議したが、各国の思惑が入り乱れてまとまらず、結論を先送りしていた。対外的な「EUの顔」ともなるEU大統領に中東欧から中道右派のトゥスク氏、外相に西欧の主要国であるイタリアから中道左派のモゲリーニ氏を配することで、地域・政治的なバランスをとった格好となる。とくに最大の懸案となっている対ロシア問題で、強硬派のポーランド、協調派のイタリアで要職を固めることで、硬軟両面の体制を敷いた。2004年以降にEU入りした中東欧の国がEU最重要ポストを確保するのは初めて。

EU大統領の後任をめぐっては、デンマークのシュミット首相が多くの支持を集めていた。しかし、フランスが非ユーロ圏のデンマークからの選出に難色を示し、代わってトゥスク氏が最有力候補に浮上した。

ただ、トゥスク氏の起用には、英国が反発し、調整が難航していた。中東欧諸国からの移民流入を制限しようとする英国をポーランドが激しく批判していたことなどが背景にある。さらに、一部の国から同氏が英語に堪能でないことから、加盟国の調整役としてふさわしくないとの意見も出ていた。

それでも、英国はトゥスク氏が中東欧諸国など多くの国から支持を取り付けたことから、反対を貫くのは困難と判断。キャメロン首相は26日、トゥスク氏が移民制限問題で理解を示し、対応を検討することを条件に、EU大統領就任を支持する意向を表明していた。この歩み寄りには、ユンケル氏の次期欧州委員長就任を阻止できなかったことに続く敗北は、英政府にとって大きなダメージになるとの思惑も働いたもようだ。

EU外相の人選に関しては、当初からモゲリーニ氏が最有力候補だった。しかし、中東欧諸国がイタリアは天然ガス輸入などでロシアに大きく依存していることから、ウクライナ問題をめぐるロシアへの対応で弱腰だとして猛反発し、一時は同氏選出の目は消えたかにみえた。

これに対して、伊レンツィ首相が各国の説得工作に乗り出し、イタリアはEUが必要に応じてロシアに厳しく対処していくことに異存はないと強調。独メルケル首相などの支持を得た。中東欧諸国もEU大統領職をポーランドが確保することから、モゲリーニ氏の外相就任を受け入れた。

EUの要職では、バローゾ欧州委員長の後任にルクセンブルクのユンケル前首相(59)が就任することが決定済み。EU大統領、外相の人選が決まったことで、今後は欧州委の重要ポストの争奪戦に焦点が移る。