欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/1

総合 – 欧州経済ニュース

EUが対ロ追加制裁を週内に策定、ロシアの対応見極め発動へ

この記事の要約

EUは8月30日に開いた首脳会議で、ウクライナ情勢について協議し、ロシアに対する追加制裁の準備を進めることで合意した。欧州委員会が具体策を検討し、1週間以内に制裁案をまとめる。ロシア軍がウクライナ東部に侵入し、軍事作戦を […]

EUは8月30日に開いた首脳会議で、ウクライナ情勢について協議し、ロシアに対する追加制裁の準備を進めることで合意した。欧州委員会が具体策を検討し、1週間以内に制裁案をまとめる。ロシア軍がウクライナ東部に侵入し、軍事作戦を展開しているとみられることを受けた措置で、ロシアが緊張緩和に向けた措置を取らない場合、新たな制裁を発動する。

EUのファンロンパイ大統領は首脳会議後の会見で、「現地の情勢が急速に悪化し、ここ数日で多くの命が失われたことを考えれば、EUとして早急に行動しなければならないとの認識で一致している」と説明。事態の改善に向けてロシア側が譲歩しない場合は「一段の措置」を講じることになると警告した。

一方、ドイツのメルケル首相は追加制裁について、すでに実施している制裁措置と同様、金融、エネルギー、軍事分野が対象になるとの見通しを示したうえで、「EUがウクライナへの武器供与やウクライナ軍への支援を検討しているとの印象を与えてはならない」と述べた。これはリトアニアのグリバウスカイテ大統領が首脳会議に先立ち、欧州はウクライナを軍事面で支援する必要があるとの見解を示したことを受けた発言。同大統領は「ロシアは欧州への統合を望むウクライナと戦闘状態にあり、これは事実上、欧州と戦っていることと同じだ」と述べ、ロシアを強く非難していた。

今回の首脳会議にはウクライナのポロシェンコ大統領も出席し、ウクライナ東部の現状などについて各国首脳に説明した。同大統領は「ウクライナ危機は後戻りできない段階に近づいている。分離派が支配する地域はすでに完全な戦闘状態になっている」と述べ、EUに対してロシアへの経済的圧力を強めるよう求めた。

EUはこれまでにロシアに対し、金融取引の制限、新たな武器輸出の禁止、石油探査に必要な資材や技術供与の制限などの制裁を実施している。追加制裁のオプションとしては、EU市場でのロシア国債の取引禁止、ロシア企業に対するシンジケートローン(協調融資)の制限、ガス開発に関連した技術供与の禁止などが考えられる。ただ、EU内ではロシアの報復措置を懸念する声が根強く、制裁強化に慎重な向きもあるため、こうした厳しい措置は「最終手段」で、当面は欧州資本市場へのアクセス制限が強化されるとの見方も出ている。