欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/1

総合 – 欧州経済ニュース

仏オランド大統領が内閣改造実施、政権批判の与党内左派を排除

この記事の要約

フランスのバルス首相は8月26日、内閣改造を実施した。オランド大統領の経済政策に批判的な与党内の左派勢力を排除して政権の求心力を回復させ、財政再建路線を推進するのが狙い。焦点の経済相には若手の金融・経済専門家を起用した。 […]

フランスのバルス首相は8月26日、内閣改造を実施した。オランド大統領の経済政策に批判的な与党内の左派勢力を排除して政権の求心力を回復させ、財政再建路線を推進するのが狙い。焦点の経済相には若手の金融・経済専門家を起用した。

フランスは単年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務付けるEUの財政規律に2007年から違反しており、財政均衡に向けた厳しい緊縮策を導入してきた。これが成長を妨げる大きな要因となり、経済が停滞し、失業率は10%を超えている。3月末の統一地方選では、こうした状況を受けて与党が大敗したことから、オランド大統領は4月に内閣改造を実施し、内相だったバルス氏を新首相とする新内閣が発足した。

オランド政権は財政緊縮一辺倒から転換し、企業減税などによって成長を促進する政策を掲げているが、財政改善を求めるEUとの関係を重視し、歳出削減も進めている。これに対して与党・社会党の左派勢力は、フランスが1~3月期から2期連続でゼロ成長となったことから、経済政策に批判的な動きを強めていた。

新たな内閣改造を迫られたきっかけとなったのは、モントブール経済相の政権批判。同経済相は前週末に行った仏有力紙とのインタビューで、政府が緊縮策を緩め、個人所得税の減税などを実施することが必要と述べたほか、財政緊縮を主唱するドイツ政府を「緊縮策で身動きをとれなくなっている」と批判した。これが与党の結束を乱すとともに、EUとの関係悪化を招きかねないとしてオランド大統領の逆鱗に触れ、バルス首相は25日に内閣総辞職を表明。大統領の指示により、内閣改造に踏み切った。

26日に発表された新内閣の顔ぶれは、モントブール経済相のほか、党内左派のアモン教育相、フィリペティ文化相を更迭し、財政再建路線と企業支援を中心とする景気対策を両立させるという政権の路線を支持する党内右派で固めた陣容。新経財相には銀行出身で、6月までオランド大統領の経済顧問を務めたエマニュエル・マクロン氏(36)を起用した。主要閣僚の外相、財務相、国防相は続投となった。

オランド大統領は閣内の不満分子を排除することで人心を一新し、既定の経済政策を推し進めたい考えだが、同大統領の支持率は歴代最低水準まで落ち込んでいる。与党内ではモントブール氏らを支持する勢力も多く、政権基盤が揺らいでいるほか、解散・総選挙を求める野党の圧力も強まっており、今後も厳しい政権運営を迫られそうだ。