2020/6/1

EU情報

欧州委がコロナ「復興基金」創設案発表、4カ国反発で調整難航が必至

この記事の要約

欧州委員会は5月27日、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたEU経済の復興に向けた7,500億ユーロの基金を創設する計画を発表した。欧州委が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、補助金と融資の形で加盟 […]

欧州委員会は5月27日、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたEU経済の復興に向けた7,500億ユーロの基金を創設する計画を発表した。欧州委が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、補助金と融資の形で加盟国に配分する。ただ、「倹約4カ国」と称されるオランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンが事実上の共同債発行となり、大半が返済不要の補助金となることに反発しており、実現に向けた調整が難航しそうだ。

提案された同基金は、欧州委がイタリアなど新型コロナによる経済の打撃が大きく、しかも財政悪化で国債発行での資金調達が難しい国に代わって債券を発行し、EUの高い信用力を生かして有利な条件で7,500億ユーロを調達するというもの。EUの次期中期予算(対象期間2021~27年)に組み込み、5,000億ユーロを補助金、残る2,500億ユーロを融資の形で、新型コロナの被害が大きい国を中心に配分する。目先の経済対策だけでなく、環境保護、デジタル化推進といった将来を見据えた投資を重視する方針を打ち出した。次期中期予算は同基金が加わることで、過去最大の1兆8,500億ユーロ規模に膨らむ見込みだ。基金以外の予算の一部も復興支援に充てる。

EU27カ国は4月下旬の首脳会議で同基金を創設することで合意したが、規模や財源など制度設計については決まっておらず、欧州委が具体案を提示することになっていた。

欧州委の案は、ドイツとフランスが18日の首脳会談で合意した内容がたたき台となっている。独仏は基金を5,000億ユーロ規模とし、全額を補助金として交付することで合意していた。これに2,500億ユーロを上乗せし、融資に回すことにした。

欧州委は市場で調達した資金を28年以降に30年間をかけて返済する方針。財源については、プラスチック製品の廃棄、巨大IT企業への課税などが浮上している。

同基金の創設はイタリアやスペイン、フランスなど新型コロナ危機が深刻な南欧諸国が要求してきた。財源に関しては「コロナ債」と称されるユーロ圏共同債を発行する案を推していた。

これに対して、ドイツやオランダなど財政健全化に努めてきたため財政に余裕があり、自力での新型コロナ危機克服も視野に入れる国々が、財政が厳しい南欧諸国などの債務を肩代わりすることになりかねないとして猛反発。ドイツはEU経済の未曾有の危機に際して加盟国の連帯が必要として譲歩し、フランスと共同提案をまとめ、今回の欧州委の提案に道を開いた。しかし、倹約4カ国は反対の姿勢を崩していない。「コロナ債」という名前こそ使われていないものの、加盟国が共同で債務を負う性格であることは変わらず、基金の3分の2が補助金に回るためだ。

復興基金と次期中期予算は全加盟国と欧州議会の承認が必要。欧州委は6月18~19日に開かれるEU首脳会議での承認を目指す。

欧州委は反対派の意見を考慮し、補助金交付に際して、対象国が資金の用途、経済再建計画を示し、全加盟国の承認を得るという条件を付けた。フォンデアライエン委員長は新型コロナ危機に「一部の国や地域、人々を捨て置いて単独で対応するか。それとも一緒に道を進んで飛躍を遂げるか。選択は簡単だ」と述べ、異例の経済対応への理解を求めた。

それでも倹約4カ国は反対の姿勢で、オーストリアのクルツ首相は融資しか認めないと明言。オランダのルッテ首相は、加盟国が全会一致できる妥協案を探るのは難しく、次回の首脳会議では決着しないとの見通しを示した。

同基金の創設が正式に決まっても、補助金と融資の受け取り開始は次期中期予算が執行される21年1月となる。EUは総額5,400億ユーロ規模の経済対策を承認済みで、6月1日から実施することになっているほか、欧州中央銀行(ECB)が国債などの資産を買い取る量的金融緩和を拡大しており、当面はこれらの措置で経済を下支えしていく。