米がエアバス巡る報復関税の対象品目を一部変更、航空機や農産品の税率は維持

米政府は12日、EUによる航空大手エアバスへの補助金に対する報復措置としてEUからの輸入品に課している追加関税について、対象品目の一部変更を発表した。エアバス機の製造を支援するEU加盟国からの輸入品を中心に、対象品目の拡大や税率の引き上げを検討していたが、航空機に対する税率は15%に据え置き、ワインやチーズなどの食品・飲料と工業品についても25%の追加関税を維持する。

米通商代表部(USTR)は6月、エアバス機の製造を支援するフランス、ドイツ、スペイン、英国から輸入するオリーブ、チョコレート、ビール、ウオッカ、フォークリフトなど30品目を対象に、追加関税の賦課について検討を着手した。これら対象品目の輸入額は約31億ドルに上る。また、既に追加関税を課している品目についても税率を見直す方針を示し、7月26日まで意見募集を行っていた。

産業界から寄せられた意見を踏まえて決定したリストによると、ドイツとフランス産のジャムなどが新たに追加関税の対象品目となる一方、ギリシャ産のチーズや英国産のスイートビスケットはリストから除外された。それ以外に変更はなく、既に追加関税の対象となっている航空機や農産品、工業品についてはそれぞれ現行の税率が維持される。

EUと米国はエアバスとボーイングに対する補助金の違法性をめぐり、2004年から世界貿易機関(WTO)を舞台に争ってきた。米政府は19年10月、WTOがエアバスへの補助金を不当と認定し、年間75億ドル相当の輸入品に最大100%の報復関税を課す権利を認めたことを受け、EUからの輸入品約160品目を対象に追加関税を発動した。仏独英スペインから輸入する民間航空機に10%、その他の工業品とワイン、チーズ、スコッチウイスキー、オリーブなどの農産品に25%を上乗せするという内容。今年2月には航空機に対する追加関税の税率を15%に引き上げたが、エアバスに対する補助金の撤廃に向けた取り組みが不十分とEUを非難し、報復関税の拡大をちらつかせて圧力を強めていた。

こうした中でエアバスは7月下旬、大型機「A350」の開発にあたり、フランスとスペインから受けた低利融資の返済条件を見直すと発表した。同社がEU加盟国から引き続き不当な補助金を受けているとの批判をかわす狙いだが、USTRのライトハイザー代表は今回改めて、EU側はWTOの勧告に沿って必要な措置を講じていないと非難。「米航空業界が受けた損害を回復するため、EUとの合意形成に向けて新たな手続きを開始する」と表明した。

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