英政府が北アイルランドの事業者を支援、EU離脱後の貿易手続き煩雑化で

英政府は7日、同国のEU離脱に伴って貿易の手続きが増える英領北アイルランドの事業者を支援する制度を導入すると発表した。「トレーダー支援サービス」と呼ばれる手続き代行サービスを9月から開始する。事業費は2億ポンド(約278億円)に上る。

EUと英国が2019年10月に合意した離脱協定案では、英国体は2020年末が期限となっている移行期間の終了後にEUの関税同盟から離脱する。しかし、英にとってEUと唯一、地続きでつながる北アイルランドに関しては、北アイルランドとアイルランドの紛争に終止符を打った1998年の和平合意に基づき、離脱後も北アイルランドとアイルランドの間に物理的な国境を設けるのを避け、物流やヒトの往来が滞らないようにするため、英国の関税区となると同時に、工業製品と農産品についてはEUの関税ルールも適用され、実施的にEU単一市場と関税同盟に残ることになった。これによって税関検査は北アイルランドとアイルランドの間で行われず、和平合意の精神に沿って厳格な国境管理が復活するのを避けることができる。

ただ、同制度では通関手続き上の国境がアイルランド島と英本土にはさまれたアイリッシュ海に引かれ、英本土から北アイルランドに流入する物品についてはEUの関税が適用されないものの、北アイルランド経由でアイルランドなどEUに輸出する目的で入ってきたものは課税される。このような複雑なシステムをどのように運用するか、具体策は決まっていないが、北アイルランドの事業者にとって英本土から流入した物品をめぐる手続きが煩雑化するのは確実で、コスト負担を懸念する声が出ている。

ゴーブ内閣府担当相(国務相)が発表した「トレーダー支援サービス」導入は、こうした不安を払しょくするのが狙い。すべての事業者を対象に、書類手続きを政府が代行する。また、1億5,500万ポンドを投じて必要なシステムの整備を進めることも明らかにした。

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