欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/15

EU産業・貿易

国外手数料めぐりマスターカードの敗訴確定、欧州裁がEUの廃止命令を支持

この記事の要約

欧州司法裁判所は11日、国際クレジットカード大手マスターカードに対し、国境をまたいだカード決済にかかる手数料の廃止を命じた欧州委員会の決定を支持する判決を下した。マスターカードは欧州委の措置を妥当と結論づけた一般裁判所の […]

欧州司法裁判所は11日、国際クレジットカード大手マスターカードに対し、国境をまたいだカード決済にかかる手数料の廃止を命じた欧州委員会の決定を支持する判決を下した。マスターカードは欧州委の措置を妥当と結論づけた一般裁判所の判断を不服として上訴していたが、今回の判決でマスターカードによる競争法違反が確定し、7年越しの紛争に決着がついた。

問題となっていたのは、カード会員が国外で買い物をする際に発生する「マルチラテラル・インターチェンジ・フィー(MIF)」と呼ばれる手数料。これは決済代行銀行がカード発行銀行に支払う手数料だが、実際には加盟店が負担している。

欧州ではマスターカードの料率が最も高く、欧州委は卸・小売業者の団体などからの苦情を受けて1990年代から調査を進めていた。その結果、マスターカードの手数料は実際のコストより高く設定されており、これが小売店のコスト負担を増大させ、最終的に小売価格に転嫁されていることが判明。欧州委は2009年、国境をまたいだカード決済にかかる手数料の徴収はEU競争法に違反すると認定し、マスターカードに対して同システムの廃止を命じた。

マスターカードはこれを受け、MIFをクレジットカードで0.8-1.9%から0.3%、デビットカードで0.4-0.75%から0.2%に引き下げる一方、決定の無効化を求めて欧州委を提訴。欧州裁の一般裁判所は12年5月、欧州委の決定は妥当とする判断を示し、マスターカードが判決を不服として上訴していた。

今回の判決は予想されていたものだが、マスターカードの敗訴が確定したことで、決済時の手数料に上限を設ける規制の導入に向けた議論が大きく前進する可能性がある。欧州委が13年7月に打ち出した規制案によると、手数料の上限はクレジットカードが利用額の最大0.3%、デビットカードは同0.2%または0.7ユーロのどちらか低い金額に設定され、まず国境をまたいだカード決済に適用した後、移行期間を経て国内でのカード利用時にも同じ料率が適用される。欧州委は同措置により、カード決済にかかる手数料が従来のおよそ半分に削減され、加盟店側のコスト負担は年間およそ60億ユーロ軽減されると試算している。

一方、欧州委による07年の決定を受け、マスターカードは英国で総額10億ポンド超の損害賠償請求に直面している。今回の判決を機に、英国以外でも小売業者などがマスターカードに対して賠償を求める動きが広がる可能性もある。