トルコはEU加盟から「一段と遠ざかっている」、欧州委が年次報告書で警告

欧州委員会は6日、EU加盟候補国に関する年次報告書を公表し、トルコは人権や司法、経済政策など多くの分野で「逆行」がみられるとして、EU加盟から「一段と遠ざかっている」と警告した。強権姿勢を強めるエルドアン大統領による「過度の中央集権化」が経済を蝕み、民主主義や司法の独立を損なっていると指摘。トルコとの加盟交渉が事実上膠着状態に陥っていることを認めた。

トルコは1987年にEUへの加盟申請を行い、2005年に加盟候補国として欧州委との交渉がスタートした。同国を巡っては、16年7月のクーデター未遂事件を機に大統領の権限が大幅に強化され、反体制派や政権に批判的なメディアへの弾圧を強めていることが問題視されており、法制度への信頼低下やロシアとの関係緊密化に伴う海外からの投資縮小や金融市場の不安定化などの問題も表面化している。

報告書は「トルコはEUの重要なパートナーであることに変わりはない。しかし、トルコは民主主義、法の支配、基本的権利、司法の独立性の分野で深刻な後退を見せ、EUからさらに遠ざかり続けている」と指摘。クーデター未遂事件を受けた非常事態宣言が解除されて2年が経過した現在も「深刻な影響」が続いているとし、EU加盟という目標の実現に向けて司法制度や言論の自由などに関して政府が繰り返し改善を公約してきたにも拘らず、「本質的な問題が解決されていない」と断じた。

さらに地中海東部のガス田開発を巡るギリシャやキプロスとの対立や、リビアやシリアの内戦に介入するトルコの政策に触れ、同国の外交方針はEUの優先課題と「鋭く対立している」と指摘。トルコが国際法に違反した一方的な行動や新たな挑発行為に及んだ場合、EUとしてあらゆる手段と選択肢で対抗する姿勢を示した。

トルコ外務省はこれに対し、欧州委の報告書は「偏見に満ちた内容で建設的とは程遠い、ダブルスタンダードのアプローチを反映したものだ」と強く批判。「われわれの切実な願いはEUが加盟候補国のトルコを特定のサークルの利己的で狭い視野ではなく、共通の利益とビジョンを通して評価することだ」とコメントした。

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