欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/22

総合 – 欧州経済ニュース

スコットランドの英残留決定、独立問題スペインに飛び火

この記事の要約

英スコットランドで18日に実施された独立の是非を問う住民投票の結果が19日に確定し、反対派が過半数を占めて独立が否決された。当初は劣勢だった独立賛成派が猛烈に追い上げたが、独立後の財政・経済運営などに対する不安が根強く、 […]

英スコットランドで18日に実施された独立の是非を問う住民投票の結果が19日に確定し、反対派が過半数を占めて独立が否決された。当初は劣勢だった独立賛成派が猛烈に追い上げたが、独立後の財政・経済運営などに対する不安が根強く、最終的に独立反対が55.3%、賛成が44.7%で英国の分裂は回避された。ただ、英政府がスコットランドへの大幅な権限移譲を公約したことで、スコットランドと同様に「連合王国」を構成するウェールズや北アイルランドでも自治権拡大を求める声が高まっており、英国は国の統治のあり方を抜本的に見直す必要に迫られている。

一方、EU内ではスペイン北部のカタルーニャやバスク、ベルギー北部のフランドル地域などでも独立運動が活発化しており、特に11月9日に独立の是非を問う住民投票の実施を目指すカタルーニャ自治州の情勢が注目される。

キャメロン英首相は開票結果を受け、独立が拒否されたことを歓迎するとともに、来年1月までにスコットランドの自治権拡大を認めるための法案を公表すると表明した。徴税や歳出、社会保障政策など、外交や安全保障以外の多くの分野で広範な権限がスコットランド行政府に移譲される見通しだ。さらにキャメロン首相は他の地域でも中央集権制度に対する不満が高まっている現状を踏まえ、イングランド、ウェールズ、北アイルランドに対しても権限移譲を進める方針を示しており、英国は地方分権の新たな形を模索することになる。ただ、英国では来年5月の総選挙でキャメロン首相率いる保守党が勝利した場合、2017年にEU離脱の是非を問う国民投票が実施されることになっている。首相自身はEUに留まることが国益に適うとの立場だが、地方分権が進むことでどのような影響が出るか予断を許さない。

EUや加盟国の首脳らは英国の分裂が回避されたことを歓迎している。欧州委員会のバローゾ委員長は19日、「英国残留を選択したスコットランドの人々の決断を歓迎する。オープンで結束したより強い欧州にとって望ましい結果になった」との声明を発表。スコットランド行政府が一貫してEU加盟を目指す方針を表明し、多くの市民がこれを支持していた点に触れ、「雇用、経済政策、エネルギー、気候変動、環境問題、規制緩和などについて、行政府と建設的な対話を継続していく」と強調した。ただ、仮にスコットランドが英国から離脱した後、容易にEU加入が実現した場合、他の地域の独立運動を後押しすることになりかねないとの懸念から、同委員長は今年はじめ、独立後のEU加盟手続きには「大きな困難が伴う」と警告していた。

カタルーニャとバスクを抱えるスペインのラホイ首相は「スコットランド市民は経済、社会、制度、政治的に深刻な結果を回避した」と指摘。「スコットランド自身、英国、欧州のすべてにとって最良の選択をした」と述べた。こうしたなか、カタルーニャ自治州の議会は19日、11月に独立の是非を問う住民投票を実施するための関連法案を賛成多数で可決した。ただ、スコットランドのケースと異なり、スペイン政府は住民投票を「違憲」として阻止する構えを見せている。世論調査では独立賛成派が優勢だが、投票を実施できるかは不透明だ。

一方、東西ドイツ統一の実現に貢献したゲンシャー独元外相は、スコットランドの投票結果は多くの市民が中央集権制度に不満を抱いていることの表れと指摘。連邦制を採用して各州に議会と内閣を置いているドイツのモデルが「より現代的だ」と指摘している。