欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2020/11/16

EU情報

欧州委がアマゾンに異議告知書、出店業者データの不正利用で

この記事の要約

欧州委員会は10日、米アマゾン・ドット・コムがEU競争法に違反した疑いがあるとして、同社に異議告知書を送付したと発表した。アマゾンは自社が運営するオンライン市場に出品する小売業者の販売データを自らの販売戦略に利用しており […]

欧州委員会は10日、米アマゾン・ドット・コムがEU競争法に違反した疑いがあるとして、同社に異議告知書を送付したと発表した。アマゾンは自社が運営するオンライン市場に出品する小売業者の販売データを自らの販売戦略に利用しており、市場支配的地位の乱用に当たるとの見方を示している。アマゾンは欧州委の見解に異議を唱えているが、最終的に競争法違反と認定された場合、世界全体の売上高の10%を上限に制裁金の支払いを命じられる可能性がある。

欧州委はアマゾンの電子商取引プラットフォーム「マーケットプレイス」を利用する小売業者からの苦情を受け、2019年7月から本格調査を進めていた。それによると、アマゾンはプラットフォームの運営者として出店業者の注文数や出荷数、売り上げなどの非公開データにアクセスし、売れ筋商品の類似品を販売したり、価格を調整するなど、小売業者としてのビジネスを有利に展開していた。欧州委はこうした商慣行により、アマゾンは特にドイツとフランスで「小売業者が直面する競争上のリスクを回避し、市場における独占的な地位を乱用した」と指摘している。

欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は声明で、アマゾンのように小売業者にオンライン取引市場を提供しながら、自らも小売業者として同じ市場で製品を販売するという、「二重の役割」を担う市場支配力を持った事業者が公正な競争を歪めることがないようにしなければならないと強調。「アマゾンは電子商取引の主要なプラットフォームであり、公消費者に公正にアクセスできるようにすることが全ての小売業者にとって重要だ」と述べた。

一方、欧州委は「Buy Box」(日本ではショッピングカートボックス)と呼ばれる商慣行について、新たな調査を開始したことを明らかにした。Buy Boxを獲得した出品者の商品はサイト上で有利な位置に表示され、購入者が「カートに入れる」ボタンを押すと当該商品が販売される仕組み。欧州委はBuy Boxの選択基準がアマゾン自身や、アマゾンの配送サービスを利用する小売業者を不当に優遇するものでないかどうかに焦点を当てて調査を進める。

アマゾンは異議告知書を受け、欧州委の見解に「同意できない」とする声明を発表した。同社は「世界の小売市場におけるアマゾンのシェアは1%弱であり、当社が参入している全ての市場でより事業規模の大きい小売業者が活動している」と反論。そのうえで「アマゾンほど中小企業に配慮し、支援してきた企業は他にない。欧州委に事実を正確に理解してもらえるよう、あらゆる努力を続けていく」と強調した。