EUの政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)は11日、EU加盟国の代表で構成される理事会を開き、気候中立の実現を柱とする「欧州グリーンディール」を資金面で支えるための戦略をまとめた「気候銀行ロードマップ」の内容を承認した。気候変動対策と環境の持続可能性への取り組みを強化するため、EIBが主導して2030年までに1兆ユーロの投資を呼び込む。
欧州委員会は今年1月、域内の温暖化ガスの排出を50年に実質ゼロにする目標の達成に向け、脱炭素化を実現するための手段となる「持続可能な欧州投資計画」を発表した。今後10年で官民合わせて少なくとも1兆ユーロを投資し、技術革新を通じて欧州経済の成長を図ると同時に、石炭など化石燃料に依存する東欧諸国などが再生可能エネルギーに転換するのを支援するという内容。EIBは同計画に基づき、これまでに気候変動対策銀行として気候関連の融資を倍増させる一方、天然ガスを含む化石燃料を利用したエネルギープロジェクトへの資金提供を21年末で終了するなどの方針を打ち出している。
気候銀行ロードマップはEIBが今後10年間に実施する、エネルギー関連融資に関する戦略をまとめたもの。1兆ユーロの資金確保のほか、気候変動と環境の持続可能性の領域への融資を段階的に拡大し、全体に占める割合を現在の30%から25年までに少なくとも50%に引き上げることや、20年末以降、すべての金融活動をパリ協定の原則と目標に合致したものとすること、革新的な低炭素技術への投資を拡大することなどが盛り込まれている。
EIBのホイヤー総裁は「脱炭素でグリーンな、弾力性に富んだインクルーシブ社会の実現に向けて欧州が主導する取り組みにEIBが大きく貢献する」と強調した。