EUと英のFTA交渉、コロナ感染で直接協議休止に

EUと英政府は19日、自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉をテレビ会議方式に切り替えると発表した。EU側の交渉担当者の1人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたためで、双方の首席交渉官による直接協議は当面、休止となる。

3月に開始されたFTA交渉は、新型コロナ感染拡大の影響で4月からオンラインでの協議に切り替えられた。6月末から対面方式に戻り、EUのバルニエ首席交渉官と英国のフロスト首席交渉官が率いるチームがブリュッセルとロンドンで協議を続けてきた。

EUと英国が関税ゼロでの貿易を続けるためには、英国がEUを離脱した直後の急激な変化を回避するため設けられた「移行期間」が終了する12月末までにFTAを発効させる必要がある。批准作業などに時間がかかるため、交渉の時間は限られている。しかし、主要な争点となっている公平な競争環境、漁業権、紛争解決の仕組みをめぐる対立が続いており、英国側が期限としていた10月15日までに合意できなかった。

その後も双方は11月中旬までの合意を目指して交渉を続け、協議は大詰めの段階に入っているが、溝は埋まっていない。対面方式での直接協議ができなくなることで、「時間切れ」の懸念が一層強まってきた。

英国のEU離脱関連法には、移行期間延長を禁止する条項が含まれているため、FTA発効の期限を動かすことはできない。このため、EUではフランス、スペイン、オランダ、ベルギーなどが欧州委員会に対して、時間切れで来年1月1日以降に英国との貿易で関税が復活する事態を見据えた緊急対策の策定を急ぐよう求めている。

一方、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は20日の記者会見で、公平な競争環境の確保で「ここ数日間で(交渉に)進展があった」としながらも、なお「ゴールまでは距離がある」と述べ、妥結に向けて交渉を続ける意向を表明した。

同問題でEUは、関税ゼロには公平な競争環境の確保が不可欠として、英国が今後もEUの公的補助などに関するルールに従うことを求めているが、英国は国家主権を盾に抵抗している。消息筋がロイター通信に明らかにしたところによると、英国側は同週の協議で、英企業に不当な公的補助が行われないよう監視する規制機関を創設することを提案した。EUの要求に沿ったものだ。ただ、EU側は英国の将来の公的補助ルールの概要が不明で、同機関がどのように機能するか分からないと主張。規制機関の独立性、権限をめぐっても問題があるとして、決着に至っていないという。

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