欧州委員会は19日、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標の達成に向け、現在12ギガワットの洋上風力発電の能力を同年までに300ギガワットに引き上げる目標を発表した。実現には8,000億ユーロ(約98兆円)規模の投資が必要と試算しており、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済を立て直すための「復興基金」などの活用を想定している。
欧州委は50年の気候中立を目標に掲げ、エネルギー、産業、運輸、農業など広範な政策分野を対象として欧州経済の構造転換を図る「欧州グリーンディール」に基づき、洋上風力発電能力の拡大を核とする「海洋再生エネルギー戦略」をまとめた。30年までに発電能力を現在の5倍の60ギガワットに引き上げ、50年までにさらに5倍に拡大する。低コストで大規模発電が可能な洋上風力の活用を促進し、温暖化対策でEUが国際社会の主導権を握りたい考え。潮の流れや波の力、海水の温度差を活用した海洋エネルギーの開発も強化する。
欧州委のティメルマンス執行副委員長(欧州グリーンディール政策統括・気候変動対策担当)は「EUには広大な海域と環境政策におけるリーダーシップがあり、海洋エネルギーの課題に取り組むうえで必要な条件がそろっている。海洋再生エネルギーをクリーンエネルギー政策の柱の1つと位置づけ、持続可能な成長と雇用創出、国際競争力の強化につなげたい」と述べた。