米金融情報会社のS&Pグローバルは11月30日、英同業IHSマークイットを買収することで合意したと発表した。買収額は債務引き受けを含めて440億ドル。誕生する新会社は世界有数の情報企業となる。
買収は株式交換方式で実施される。IHSマークイットの株主は1株につきS&Pグローバルの株式0.2838株を受け取る。1株当たりの買い取り価格は、前営業日(27日)の終値に4.7%を上乗せした水準だ。両社が統合して誕生する新会社の持ち株比率はS&Pグローバルの株主が67.75%、IHSマークイットの株主が32.25%となる。2021年下期の買収手続き完了を目指す。
IHSマークイットは英金融情報会社マークイットと米大手市場調査会社のIHS が16年に合併して発足した企業。景気動向の指標となる購買担当者景気指数(PMI)で知られるほか、債券指数やエネルギー、自動車市場のデータ提供などで強みを持つ。国債や企業の信用格付けや米国の代表的な株価指数であるダウ平均、S&P500を主力とするS&Pグローバルは、買収によって事業基盤を大きく強化できる。
金融情報サービスの需要は、コンピューターが株価などの動きを瞬時に把握し、超高速の自動売買を繰り返す「アルゴリズム高速取引」「高速高頻度取引」の普及などを受けて、機関投資家の間で急増している。これに伴って業界では競争力強化に向けた再編の動きが活発化しており、ロンドン証券取引所(LSE)グループは19年8月、金融情報やリスク管理などのサービスを提供するリフィニティブを買収することで合意した。
ただ、リフィニティブ買収をめぐっては、EUが競争上の懸念があるとして承認を渋っている。S&PグローバルによるIHSマークイット買収も同様の問題によって、EUと米国当局による承認が実現への高いハードルとなる見込みで、一部事業の売却を迫られる可能性がある。