ドイツ政府は19日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための措置を延長・強化すると発表した。12月中旬に開始した本格的なロックダウンの効果で新規感染者数は減少しているものの、従来のウイルスより感染力の高い変異種が出現したことから、公共交通機関、店舗内での医療用マスク着用を義務化するなど、さらに踏み込んだ措置を実施する。
英国やアイルランドで猛威を振るっている変異種「B1.1.7」は感染力が従来種の1.7倍と高い。すでにドイツでも感染が確認されていることから、国と州の危機感は大きく、メルケル首相と国内16州の首相は25日に予定していた会議を前倒して19日に開催し、対策を協議した。
会議では現行のコロナ制限措置の期限を今月末から2月14日まで延長するとともに、新たな対策を導入することが取り決められた。公共交通機関と店舗での医療用マスクの着用義務化と、在宅勤務を可能な限り実施することを雇用主に義務付けるルールが導入される。
公共交通機関と小売店などの店舗ではこれまでもマスク着用が義務付けられていたが、マスクの種類については規制がなく、布マスクを使用する人が多かった。しかし、布マスクには着用者の感染を防ぐ効果がほとんどないことから、国と州は布マスクよりも感染拡大防止効果の高い医療用マスクなどの着用義務を導入することにした。具体的には医療用マスク(通称OPマスク)、ないしフィルター機能が高い「FFP2」「N95」「KN95」などの微粒子用マスクを着用しなければならなくなる。
労組系のハンス・ベックラー財団が12月に発表した調査によると、就労者全体に占める「勤務を全面的ないし主に自宅で行う人」の割合は、緩やかなロックダウンが導入された11月時点で14%にとどまった。第1回目のロックダウンが実施されていた4月(同27%)と比べて約半分に減っている。
国と州はこれを踏まえ、自宅でも仕事を行える被用者に対し在宅勤務を促すことを雇用主に義務付けるルールの導入を取り決めた。満員の電車やバスでの通勤が感染拡大の原因になる懸念があるためだ。
同ルールの具体的な内容は現在、連邦労働省が作成しており、3月15日までの時限措置として省令化される。国内での報道によると、ある企業のどの部署で在宅勤務が可能かを判断・命令する権限を監督当局に付与し、すぐに実施できる命令に従わない企業は当該部署の業務停止を命じられる可能性がある。また、最大5,000ユーロの制裁金を科される。被用者は雇用主から受けた在宅勤務提案を拒否できる。
同省令では職場での感染防止策も義務付けられる。具体的には工場など同一空間内で複数の社員が働く場合、1人当たりの面積を最低でも10平方メートル確保するルールが導入されるもようだ。省令案にはさらに、◇人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数が50人を超えた地域では従業員に医療用マスクなどを提供する◇同200人を超えた地域では新型コロナの迅速診断検査を従業員が毎週、受けられるようにする――ことを雇用主に義務付けるルールも盛り込まれているという。