英漁業関係者がロンドンで抗議デモ、完全離脱でEU向け輸出が停滞

EUからの完全離脱に伴い今月1日から新たな国境管理が始まったことで、英国からEUへの水産物の輸出に支障が出ている。英国の漁業関係者は18日、物流の混乱で大きな損害が生じているとして、首都ロンドンで政府に対する抗議デモを展開した。英海域での主導権奪還に向けて水産業界は離脱を強く支持していたが、通関手続きの煩雑化などで実際には損害を被る事態となっており、ジョンソン政権への不満を募らせている。

英国とEUは離脱移行期間終了の直前に自由貿易協定(FTA)で合意し、関税ゼロ貿易は維持されたが、煩雑な通関手続きが新たに発生し、海産物の輸出業者は漁獲証明書や輸出申告書などの提出が義務付けられた。トラック1台分の手続きに何時間もかかるケースがあり、輸送の遅延によって魚介類の鮮度が落ちるとして、EU側で英国からの仕入れを取りやめる動きが広がっている。

地元メディアによると、スコットランドの海産物輸出業者らが首相官邸付近にトラック20台以上を止めて抗議。コンテナには「ブレグジット大虐殺」「無能な政府が甲殻類産業を破壊する!」などのスローガンが掲げられた。カニやエビなどをEU向けに輸出するベンチャー・シーフーズの幹部はロイター通信の取材に対し、1週間に400ページに上る書類の提出を求められた業者もおり、このままでは「システムが崩壊しかねない」と指摘。「ジョンソン首相は早急に水産業界が直面している問題に向き合う必要がある」と訴えた。

一方、フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、英国港湾協会(BPA)は18日、ゴーブ内閣府担当相に書簡を送り、通関手続きに時間がかかるのは英側の担当官が不足していることに加え、EUの輸入規制が「極めて厳格に」適用されているためだと指摘。「通関手続きの現実的な運用について、EU、特にフランス当局と早急に協議するよう強く求める」と訴えた。

英政府報道官は水産業界がEU完全離脱後の「一時的な問題」に直面している現状を受け、損害を受けた企業を支援するため2,300万ポンド(約32億5,400万円)規模の基金の設立を検討していると説明。そのうえで、円滑な物流を確保するため、国内の業界団体やEU加盟国の通関当局と緊密に連携し、通関手続き上の問題を把握して適切に対処すると強調した。

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