ICEがEUの排出権取引を蘭に移転、英のEU離脱で

米インターコンチネンタル取引所(ICE)傘下のICEフューチャーズ・ヨーロッパは8日、EUの二酸化炭素(CO2)排出権取引の拠点を英ロンドンからオランダのアムステルダムに移転すると発表した。英国がEUを離脱し、金融サービスでのEU単一市場とのアクセスが確保されるか不透明となっているためで、20年4~6月期中に実施する。

移転するのは排出権の先物、オプション取引。ICEフューチャーズ・ヨーロッパのアムステルダムにある天然ガス先物、オプション取引拠点に移す。同取引の決済機能はロンドンに残る。

ICEフューチャーズ・ヨーロッパは排出権取引で世界最大の取引所。EUの排出量取引制度(EU-ETS)で重要な存在となっている。今回の移転決定は、温室効果ガス削減など持続可能な社会を実現するための金融「サステナブルファイナンス」でハブとなることを目指す英政府にとって大きな痛手となる。

英国の金融市場はEU離脱の移行期間が終了した1月からEUから切り離された。金融サービスはEUと締結した自由貿易協定(FTA)の対象外となっているためだ。英国内でEUと同等の金融規制、監督システムが機能していると認定されるまで、EU金融市場とのアクセスが制限される。これを受けて証券、デリバティブ取引が流出している。

英国に拠点を置く清算機関がEU域内の顧客向けのデリバティブ取引決済業務を継続することは認められるが、2022年6月末までの暫定措置。ICEフューチャーズ・ヨーロッパが排出権取引の決済をロンドンで継続できるかどうかは不透明だ。

上部へスクロール