世界保健機関(WHO)の諮問委員会は10日、英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、変異ウイルスが広がっている地域や65歳以上の高齢者に対しても「接種を推奨する」との中間報告を発表した。変異ウイルスや高齢者に対してはワクチンの効果が限定的とする研究報告が出されているが、重症化や死亡を防ぐ効果は十分にあると判断した。
アストラゼネカのワクチンを巡っては、南アフリカで確認された変異ウイルスに対し、軽度から中程度の症状を防ぐ効果は低い可能性があるとして、南アフリカ政府が接種の開始を見合わせている。WHO諮問委のクラビオト委員長は記者会見で、臨床試験の結果、南アフリカ型の変異ウイルスに対して発症予防効果の著しい低下がみられた一方、重症化リスクについて評価するための十分なデータが得られなかったと説明。そのうえで「予防効果が不完全であっても、感染が広がる国で接種を推奨しない理由はどこにもない」と述べ、各国政府に対し計画どおりに接種を進めるよう勧告した。
一方、高齢者への接種に関しては、有効性を示すデータが不足しているとして、ドイツやフランスなどが65歳以上への接種を推奨しない方針を打ち出している。この点について諮問委のホンバック博士は、「高齢者でも免疫反応が起きるとのデータが得られており、効果が期待できる」と述べ、65歳以上に対しても接種を推奨するとの見解を示した。
こうしたなかでアストラゼネカは10日、ドイツのバイオ医薬企業IDTビオロギカと提携し、同社の工場でアストラゼネカ製ワクチンを生産すると発表した。ドイツ中北部デッサウにあるIDTの工場を拡張し、供給が遅れているEU向けの生産を拡大する。
欧州委員会は昨年8月にアストラゼネカと最大4億回分の事前購入契約を結んだが、同社は1月下旬、3月末までのEU向け初回供給量が3,100万回分と、当初予定されていた8,000万回分の半分以下になると通告していた。同社は今回、2月中旬に1,700万回分を納入し、3月には供給量を増やすと表明した。
さらにアストラゼネカは11日、2月に1億回分を生産し、その後は外部に委託するなどして4月までに月間2億回分を生産すると発表した。同社は日本を含む世界各国と計30億回分を供給する契約を結んでいる。