欧州委員会は3日、新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機に対応するため、EU加盟国の財政赤字を厳しく制限する財政規律の適用を一時的に停止する措置を2022年末まで継続する方針を示した。加盟国の承認を経て最終決定する。
EUの財政規律を定めた安定成長協定は、各国に毎年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることなどを義務付けている。違反した場合は是正を求め、制裁を科すこともある。ただ、例外的な状況では「一般免責条項」を適用し、赤字が上限を超えることを認めている。
欧州委は2020年3月、コロナ禍が各国の経済、社会に大きな影響を与えている事態が同条項に該当すると判断。各国が苦境にある企業への支援などを柔軟に行えるようにするため、財政規律の適用停止を決定した。
財政規律適用は2021年末まで凍結されることが決まっていた。欧州委のドムブロフスキス上級副委員長は、コロナ禍が「現在も人々の生活や経済を圧迫している」として、同凍結措置を22年まで続ける必要性があると指摘。ジェンティローニ委員(経済担当)は、リーマンショックに端を発した10年前の経済危機に際して実施した公的支援措置の打ち切りが「早すぎた」というミスを繰り返さないため、同措置の早期解除は避けるべきとの見解を示した。
欧州委は23年に財政規律を正常化させる方針だが、加盟国のうち1カ国でも経済がコロナ禍前の水準まで回復していない場合は財政規律の柔軟性を「全面的に活用する」として、何らかの特例措置を認めることを示唆した。
EUでは新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた域内経済の復興に向けた総額7,500億ユーロ規模の「復興基金」が創設され、支援を必要とする国に融資と返済不要な補助金の形で資金を配分することになっている。加盟国は欧州委とともに、同支援の経済効果や5月前半に発表される最新のEU経済予測の内容を検証し、財務相理事会で財政規律適用停止延長の可否を判断する。