欧州委員会のフォンデアライエン委員長とバイデン米大統領は5日、電話会談を行い、航空機メーカーへの補助金をめぐり、双方が発動した報復関税を4カ月間停止することで合意した。この間に恒久的な解決策を探り、トランプ米前政権下で悪化した米欧関係の修復を目指す。
EUと米国はエアバスとボーイングに対する補助金の違法性を巡り、2004年からWTOを舞台に争ってきた。WTO上級委員会は18年5月、EUによるエアバスへの補助金は不当との最終判断を下したのに続き、19年3月には米国によるボーイングへの補助金も不当と認定。米国は年間最大75億ドル相当のEU製品、EUは年間最大40億ドル相当の米国製品に報復関税を課すことを承認した。これを受けて米国は19年10月、EUから輸入する航空機、ワイン、チーズなどに最大25%の追加関税を課す報復措置を発動。EUも昨年11月から航空機やトラクター、ワインなどの米国製品に最大25%の関税を上乗せしている。
EUと米国は共同声明で、航空機補助金問題に関して「包括的かつ永続的な解決策」に向けて協議するとともに、航空機市場を歪める「中国のような非市場経済圏からの新規参入がもたらす不適切な貿易慣行」への対応策も検討課題とする方針を表明。フォンデアライエン氏は報復関税の一時停止について「(米欧の関係修復に向けた)新たなスタートの象徴」と強調した。
航空機補助金をめぐっては、英米両政府も4日、互いに課している報復関税を4カ月間停止することで合意した。英国はEUからの完全離脱を受け、1月1日から米国に対する報復関税の適用を停止している。米国も対英関税を停止してこの間に交渉を進め、早期の紛争解決を目指す。
米国はEUに対する報復関税の一環として、19年10月から英国産のスコッチウイスキーや衣類などに最大25%の関税を上乗せしてきた。英政府によると、対象品目の輸出額は約5億5,000万ポンドに上る。
両国は共同声明で「紛争解決に向けて一歩を踏み出す」と強調。トラス英国債貿易相は「同盟国の米国が新大統領の下、公平な解決を目指す英国の対応が受け入れられたことは喜ばしい」と述べた。