イタリア政府は8日、新型コロナウイルス感染による国内の死者が10万人を超えたと発表した。死者が10万人を突破したのは米国、ブラジル、インド、メキシコ、ロシア、英国に次ぐ7カ国目。EU加盟国では初となる。新規感染者も増えており、政府は12日、外出・営業規制を強化すると発表した。
伊保健省によると、新型コロナ感染による死者は同日に318人増え、累計で10万103人に達した。死者が5万人に達するまで9カ月かかったが、倍増の10万人となるまでの期間は3カ月半で、死者増加のペースが加速している。
同国は欧米諸国で最初に新型コロナの感染が拡大。昨年3月にロックダウン(都市封鎖)を実施し、夏には新規感染者が急減したが、秋に第2波に見舞われた。1月には感染者が減ったものの、このところ再び感染が拡大している。変異株による感染が増えていることが背景にある。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計では、同国の10万人当たりの死者は米、英などを上回っており、メキシコ、ペルー、ハンガリー、南アフリカに次ぐ世界5番目の水準だ。保健省によると、先週の1週間当たりの新規感染者は前週から23%増加した。1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」は5日時点で1.06と1.0を上回っており、さらに感染が広がるのが避けられない見通しだ。
コロナ禍収束の切り札として期待されるワクチンの接種も、メーカーの供給が遅れ、予定通りに進んでいない。ドラギ首相は8日の国民向け演説で、状況が悪化していることを認めた上で、ワクチン接種を「大きくステップアップさせる」意向を表明。「出口はそう遠くない」と述べた。
イタリアでは地域の感染状況に応じて、外出・営業制限が異なる。政府は12日、最も規制が厳しい「レッドゾーン」に指定する要件を変更し、過去1週間で人口10万人当たり250人以上の新規感染者が出た地域を15日から自動的にレッドゾーンにすると発表。首都ローマがあるラツィオ州、ミラノがあるロンバルディア州など7州が新たにレッドゾーンとなり、不要不急の外出が禁止され、学校、飲食店などが閉鎖される。これによって半数以上の州で同規制が適用されることになる。また、イースター(復活祭)に重なる4月3~5日については、同規制を全土で適用する。